
近年最も注目を集めているビタミンは、なんといってもビタミンDです。
ビタミンDというと、カルシウムの吸収や骨の代謝を助ける、つまり骨を丈夫にするビタミンだと思っていました。ところが最近では、ビタミンDの恩恵は骨だけに限らず多岐にわたっており、免疫をコントロールする上でも重要な働きをしているという見方が増えてきました。
例えば:
風邪やインフルエンザに罹りにくくする。
年をとってから呆けるのを防ぐ。
喘息発作の頻度を減らし、症状を軽くする。
多発性硬化症(MS)のリスクを減らす。
関節リューマチのリスクを減らす(女性)。
(タイプ1)糖尿病のリスクを減らす。
高血圧や心臓病のリスクを減らす。
など次々と嬉しくなるような可能性が示唆されるようになりました。もちろん可能性は可能性にすぎません。絶対にそうである、と断定するために必要な直接証拠(エビデンス)はまだ不十分で研究段階と言えます。それでもドラッグストアに並ぶビタミンDサプリメントの数がここ一年で大きく増えたのは間違いありません。
ビタミンDと癌との関係についても既に研究が始まっていますが、結果は様々で専門家の意見が分かれている状態のようです。私が最も興味深いと思ったのは、アメリカで1179名の閉経後の女性対象に行われたトライアルです。参加者はサプリメントとして毎日カルシウム(1500mg)を摂るグループ、カルシウムとビタミンD(1100IU)の両方摂るグループ、何も摂らないグループの3つに分けられ、調査は4年間続きました。すると、何も摂らないグループに比べてカルシウムを摂ったグループは47%、カルシウムとビタミンDを摂ったグループは60%も癌の罹患率が低い、という結果が出たのです。ただこのトライアルは、もともと骨折の頻度を調べるのが主目的で、癌の発生率の比較は2次目的でした。そのこととビタミンDのみ摂取するグループがなかった点が足を引っ張り、ビタミンDと癌との係わりを立証するには弱いエビデンスとなってしまいました。
賛成論と慎重論が行き交う中、一足先にビタミンDを臨床に採用している病院もあります。その一つがNY州バッファローにあるロズウェルパーク癌センターで対象は乳がんです。乳ガン患者の70〜80%はビタミンD不足な上、ビタミンD不足と再発率とを結びつけた研究もあることから、ビタミンDを大量に投与する新療法を開始したようです。ロズウェルパークは以前から免疫療法のトライアルをやっていたりして、新しい治療法に対して積極的な病院という印象があります。この試みがどうでるか、それはまだわかりません。しばらく前にビタミンC療法が話題になったものの効果はいまひとつだった、という例もあるので、期待しながらも期待しすぎない方がいいのかもしれません。
ビタミンDの癌予防効果をサポートする状況証拠としてよく挙げられるのは、癌発生率の北高南低傾向です。癌になる人の数は、緯度の高い北に位置する国(ヨーロッパ、北米)に多く、赤道に近い南に位置する国(南アジア、中南米、アフリカ)に少ないことは知られています。たまたま北には経済的に裕福な国が多く、南には発展途上の国が多いため、癌を一種の文明病のように解釈している人もいますが、ビタミンDが関与しているということになれば話が変わってきます。ビタミンDは食べ物から摂ることもできますが、主な源は太陽の光です。年間を通じて強い日差しをさんさんと浴びていたらビタミンD不足にはなりません。
カナダのような北国では冬場の日照時間は本当に短いのです。朝目が覚めるとまだ真っ暗。出勤時には日が昇ってきますが、夕方会社を出るとすでに真っ暗。少なくとも4ヶ月は、お日様をろくに見ない毎日が続くのです。地理的にビタミンD欠乏になりやすいという事実を考慮し、カナダの癌協会はビタミンDのサプリメント(一日1000IU)を摂取することを勧めています。
卵巣ガンも北高南低の癌です。WHOが開発した世界175ヵ国のデータベースを集計したところ、卵巣ガンの罹患率は北、南半球共に緯度の高い地方に高く、赤道に近い地方との差は5倍もあるそうです。卵巣ガンと日光(特にUVB)の量、そして体内に生成されるビタミンDの量との間に何らかの関係があるのかどうか、更なる研究が待たれます。
皮膚でビタミンDを生成するためには、サンスクリーンをつけずに10〜15分間の日光浴を最低週2回は行わなければなりません。ここで問題になるのは、紫外線は皮膚ガン(メラノーマ)の原因になるということです。東洋人は白人ほどメラノーマのリスクが高くないので、1日15分の直射日光はベネフィットの方が大きいような気がします。日焼けは美容の敵だと思っていましたが、健康は美容より大事ですよね。短時間の日光浴、適量のサプリメント、食事(スキムミルク、鮭缶)でビタミンDの補給に努めるのは、手軽に出来る補完療法ではないでしょうか。
情報源:ビタミンD(一般)、閉経後女性対象のトライアル、ロズウェルパークの新療法、卵巣ガンの南北差
【食生活/代替医療の最新記事】











