2010年05月30日

ブルーベルベット

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俳優のデニス・ホッパーが亡くなりました。「イージー・ライダー」や「地獄の黙示録」で有名になった方ですが、個人的には「ブルー・ベルベット」が一番印象に残っています。味のある(凄みのある)役者さんであったばかりでなく、画家、写真家としても活躍されました。前立腺がんだったそうです。2週間前に、レインボウやサバスでヴォーカルをやっていたロニー・ジェイムス・ディオが胃がんで他界したばかり。寂しいニュース続きです。

デニス・ホッパーに話を戻しますと、幾つかのニュースや新聞は“died from complications of prostate cancer”と報道しているんですね。これは“died of prostate cancer”と微妙に違うというか… 大元の原因は前立腺がんだとしても、直接の死因は合併症…ということは治療がらみ?と少し気になりました。

デニス・ホッパーが最初に前立腺がんの診断を受けたのは2002年だそうです。おそらくは治療を受けて何年も寛解していたのが、昨年10月末に転移、再発が見つかったものと思われます。11月初めに芸能レポーターが追っかけインタビューをしているのを見たら、その時点では“I feel great”と元気一杯で、USC(University of Southern California)でexperimental treatment(トライアルを指す)を受けると明るく話していました。それが5ヵ月後の3月26日にハリウッドの式典に出席した頃には、見る影も無いほどやつれ果てていました。骨転移であんなに急激に弱るものなのでしょうか。癌の仕業なのか、それともトライアルで試した効かない薬の副作用のせいなのか…多分両方なのでしょうね。

前立腺がんの治療は、手術、放射線、ホルモン療法がメインだそうです。ホルモン療法が効かずに転移、再発してしまった場合は効果的な治療法がないらしく、抗がん剤をあれこれ使って延命を試みるのが現状。そういう状況下でどんな治療を受けるか、受けないかの決断は大きな賭けだと思います。賭けに負けて薬が効かなければ、全身状態の悪化に拍車がかかるだけという可能性も十分あります。でも100人に1人にしか当たらない薬でも、その1人が自分であったら…という気持ちだって捨てきれないことでしょう。デニス・ホッパーは5ヶ月の治療生活で体重が100パウンド(約45キロ)になってしまったそうです。(身長は約175cm)彼の病状や治療の詳細が公表されていない以上、あれこれ推察しても意味がありません。ただ一般論として、癌は病気が進めば進むほど判断の違いが余命の長さと質を左右するような気がします。

デニス・ホッパーの訃報で、もう一つ考えさせられたのは癌の統計の不毛さについてです。前立腺がんは欧米で特に罹患率の高い癌です。しかしスクリーニングが進み、初期治療の効果も高いので10年生存率は90%を超えます。それでもその90%に入れない人はいるのです。その半面、早期発見が難しく進行も早い、いわゆる予後の厳しい癌であっても10年生存率がゼロということはありません。数は少なくても10年以上元気に暮らす人は存在するのです。統計というのは確かに参考にはなりますが、統計は統計、自分は自分と割り切ることの大切さをしみじみ感じます。

地獄の黙示録のワンシーンです。埋め込みが見れない場合はこちらをクリックして下さい。



天国でブランドと同窓会ですね。安らかに眠って下さい。
posted by leo at 18:57| Comment(4) | 癌になったセレブリティ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月23日

続アバスチン

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アバスチンの続きです。

アバスチンは比較的新しいお薬で話題に上ることも多く、今時の癌患者および患者の家族の方の間では知名度が高いのではと思います。既にこの薬についてよくご存知の方も大勢いらっしゃるでしょうが、自分の勉強として幾つか資料を読んだばかりなので、忘れないようにここに記しておきます。

血管新生阻害薬(angiogenesis inhibitor)とは何ぞや?

癌が生存していく上で、酸素や栄養を運んでくる血液を確保することは必要条件です。そこで癌は血管新生を促す増殖因子なるものを分泌して、せっせと血管作りに励みながら大きな腫瘍へ成長します。理論上、血管新生阻害薬により血管を作れなくなった癌は縮小すると考えられます。私の脳内イメージでは、従来の抗がん剤(殺細胞性)が癌に爆弾攻撃をするのに対し、血管新生阻害薬は癌を兵糧攻めにするような感じですね。流れ弾が健康な細胞に当たることがなさそうなので、マイルドなお薬という印象はあります。

血管新生阻害薬にもいろいろな種類があり、60年代に胎児奇形の問題を起こしたサリドマイドも血管新生阻害薬の一つです。アバスチン(ベバシズマブ)は、特に血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor 略してVEGF)というタンパクを標的にしています。VEGFは癌が分泌する増殖因子の中で一際パワフルな物質。VEGFをブロックすることにより癌の毛細血管網を破壊するのが狙いだそうです。

アバスチンは卵巣がんと相性がいい?

卵巣がんは腫瘍内の血管の密度が高いほど予後が厳しくなるというデータがあり、血管新生阻害は腫瘍の増大を抑える上で鍵になると考えられています。また、VEGFは卵巣の生理的な機能と深く係わっていることから、抗VEGF薬は卵巣がんに特に効果があるのではと期待されていました。

治験を始めたところ、予想通りアバスチンは卵巣がんと相性がいいことが判明してきました。他の癌(大腸がん、肺がん、乳がん)に対しては単剤ではあまり効かず、殺細胞性の抗がん剤と組み合わせることにより治療効果を強化する働きのあるアバスチンですが、卵巣がんに対しては単剤でも病気の進行を遅らせる力を発揮しました。従来の抗がん剤と組み合わせるのも勿論OKのようです。

アバスチンと再発卵巣がん−延命効果はどれだけ?

過去に行われた治験によると、アバスチンは再発卵巣がんに対して延命効果を示しました。例えばGOG170Dというトライアルでは、再発卵巣がん患者62名を対象にアバスチン単剤を3週間に1度のペースで投与したところ、奏効率21%、無進行期間は中央値で4.7ヶ月、参加者の40%は6ヶ月以上病気の進行が止まり、生存期間は中央値で17ヶ月だったそうです。その他の治験結果をまとめた便利な表を見つけたので転載させていただきます。

注:サムネをクリックすると大きくなりますが、具体的な数字を見ると落ち込む人はスルーして下さい。

Avastin table 1.jpg

データは一番左の行から:
研究者のお名前、参加者数、参加者が今まで受けたレジュメンの数、治験がアバスチン単剤(single)か抗がん剤との併用(combination)か、白金感受性の有無(+/+の場合は感受性が有る人と無い人の両方含む)、完全+部分奏効率(%)、無進行期間中央値(月)、生存期間中央値(月)

ファーストラインではどうか?

先週の投稿内容と重複しますが、アバスチンを白金+タキサンのコンボに加えたファーストライン治療のトライアル結果は、6月のASCOの総会で発表になるらしいです。製薬会社(Roche)の発表によると、アバスチンを地固めとして継続投与した患者群は再発までの期間が長かったそうです。寛解期間が延びたといっても月単位のような気がしますが、効き目の程について早く詳細を知りたいです。再発する人の数が減ったのかどうかも気になるところです。

アバスチンの副作用は?

アバスチンは分子標的薬なので殺細胞系の抗がん剤の様な副作用はないだろう、と期待しがちです。実際、白血球が少なくなったり髪が抜けたりはしないようですが、副作用が全くないわけではありません。アバスチンの副作用で比較的起こりやすいのは高血圧とタンパク尿(腎臓の障害)です。血栓が出来たり出血しやすくなることもあるようです。傷の治りが遅くなるという話もあります。実際にアバスチンで治療された卵巣がん患者さんの体験談によると、声が枯れたり鼻水が出たり…といった軽い症状を訴える人が多く、総じてアバスチンの治療は楽勝という意見です。

いいことずくめ…ではない?

3年くらい前、白金感受性の無い再発卵巣がん患者さん対象にアバスチン単剤の治験があったのですが、副作用が大きいために中止になってしまいました。一番問題になったのは腸穿孔です。通常アバスチンによる腸穿孔のリスクは1〜4%と言われていますが、その治験では44人の参加者の内5人の方(11.4%)に腸穿孔が起き、一人は亡くなられました。

アバスチンの腸穿孔は卵巣がん患者の間で起こりやすいのでしょうか? 卵巣がんは腹腔内で進行、再発することが多いため、腸壁が厚くなっていたり腸閉塞が起きているケースも少なくありません。このことが腸穿孔の発生に関与しているのではと指摘する声もあります。が、はっきりした答えは出ていないようです。中止になったのは上記の治験だけで、他の治験は大規模なフェーズ3の治験も含めて無事終了していることを考えると心配しすぎない方が良いような気がします。病状や治療歴によってはリスクが高くなるかもしれない、ということだけ心に留めておこうと思います。

Wish List

最後にアバスチンについて、この点をもっと解明してほしいというWish Listです。血管新生阻害薬であるアバスチンも従来の抗がん剤同様、効く人と効かない人がいるようです。例えば腫瘍が特定の物質を発現している場合に効きやすい…といった因果関係が存在するのかどうか、その辺りがもっとわかってくるといいですね。加えて重篤な副作用が起きやすい患者も絞り込めるといいなぁ。難しいことだとは思いますが。

期待の新薬だから誰でも試してみたい、という意見もあるでしょうが、何度も言うように非常に高価な薬です。副作用が少ないといっても無害なわけではありません。リスクより恩恵の方が明らかに大きい患者群を特定することが可能であれば、その人たちを中心に使用した方が患者にとっても保険制度にとっても有益なのではないか、と個人的には感じています。

情報ソースとして使わせていただいたのはNCIInspireJCOMedscapeでした。
posted by leo at 15:50| Comment(8) | 抗がん剤(一般) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月16日

アバスチン・ニュース

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アバスチンが卵巣がんの標準治療に加わる日がいよいよ近づいてきました。少なくとも製薬会社はそう期待しているようです。

1月に書いた「これからの10年」という投稿の中で、カーボプラチン+タキソールの黄金スタンダードにアバスチンを加えたフェーズIIIの治験(GOG218とICON7)についてふれましたが、GOG218の方は6月のASCO(米臨床腫瘍学会)の年次総会で結果発表があるようです。それを待たずしてアバスチンの販売元であるRoche(正確には傘下のBiotech、日本では中外製薬)は2月末にプレスリリースを出しました。

GOG218は、ステージIIIで手術で腫瘍が取りきれなかった人およびステージIVの人を対象にしたファーストラインの治験です。
@カーボプラチン+タキソール+プラセボ6回後プラセボのみ継続、最長トータルで22回
Aカーボプラチン+タキソール+アバスチン6回後プラセボのみ継続、最長トータルで22回
Bカーボプラチン+タキソール+アバスチン6回後アバスチンのみ継続、最長トータルで22回
(全て投与は3週に1回)
の3グループに分かれ、それぞれの治療効果を比較しました。ロシュの発表によると、グループ@とグループAの間には違いが出なかったけれども、グループBの患者群は再発までの期間が他のグループよりも長かったということです。

ただ、無進行期間が具体的にどのくらい延びたかについては明らかにされませんでした。また生存期間については、まだ統計がでていないのではないかと思われます。(終了してまだ年月が浅い治験です。参加された方の多くは今も生きていらっしゃる…と願っています。)

進行した卵巣がんの場合、カーボプラチン+タキソール(静脈投与で3週に1度x6回)の初期治療終了後、再発するまでの中央値は17〜18ヶ月と言われています。17ヶ月が20ヶ月になったのか、25ヶ月になったのか…そのあたりの数字がはっきりわからないと、どの程度喜んでいいかわかりません。が、統計的に有意な差が出ればアバスチンが地固め・維持療法として標準治療に加わることは十分あり得ます。卵巣がんは効果的な地固め療法がないのが悩みの種であることを考えると、やはり朗報なんでしょうね。

アメリカでは既に、治験の枠外でもアバスチンをoff-labelで卵巣がんの治療に用いる病院が多いと聞いています。off-labelというのは薬を未承認の用途に使用することです。個人の健康保険が多いアメリカだからそういう枠に外れたこともできるのかと思いましたが、Medicareという政府がやっている保険でもほとんどの州ではカバーされるらしいです。アメリカ以外の国では未承認の用途に使うのは難しいのが現状です。カナダの州ヘルスプランではまだカバーされません。オーストラリアでも同様で、卵巣がん治療に使用するアバスチンに公立保険の適応を求める患者さんたちがFacebookで署名運動を行っています。

分子標的薬、血管生成阻害薬はアバスチンに限らず高額ですからね〜。かなりの効果が証明されない限り、どこの国でもそう簡単には保険を適応できないのだと思います。アメリカ以外の国では、GOG218だけでなくICON7(主にヨーロッパで行われた治験)の結果も照らし合わせた上でないと決断を下さないような気もします。ちなみにICON7もトライアル自体は終了しているので、現在集計中なんじゃないかな〜。

身も蓋もない言い方ですが、高額な新薬は製薬会社にとっては金の卵です。アバスチンは2009年度Rocheの売り上げNo1のお薬。(以下リツキサン、ハーセプチン、タミフルと続きます。)前述のプレスリリースのタイミングも、実はその数日前にアバスチンが手術不可能な進行胃がんの治療に於いて効果がなかった、という敗北宣言を会社が公にした経過があり、株価が落ちるの防ぐ為にフォローをいれたのかと勘ぐりたくもなります。そこまで意地の悪い見方でなくても、有望な新薬のフェーズ3の治験というのは患者にとって希望の綱であるばかりでなく、立場の全く違う製薬会社にとっても「関が原」みたいなのだろうということは想像に難くありません。

医薬品市場を専門とするアメリカのコンサルティング会社Decision Resourcesは、アバスチンの卵巣がんへの使用承認はアメリカ、ヨーロッパでは2011年、日本では2013年と見ています。(カナダは?)そして卵巣がん市場が加わることでアバスチンの売り上げは3倍増となり、2018年には世界トータルで売り上げ15億ドルに上ると予測しています。(そんなお金どこから出てくるんでしょうね。税金?保険料?個人のお財布?)

なんだか世知辛い話になってしまってすみません。経済的側面がやや先行気味のアバスチン最新情報(?)でした。
posted by leo at 14:39| Comment(2) | 抗がん剤(一般) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月09日

患者の声を届けたい

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市販薬を含め、薬品には程度の違いこそあれ副作用が付き物のように思います。副作用は服用した本人にしかわからない症状も含みます。この薬を飲んだらこういう症状が出た…という患者の生の声が、新薬の開発、承認、使用ガイドラインの作成過程などにおいてどれだけ反映されているのでしょうか?といった疑問を鋭くついた新聞記事(NYタイムス)を読みました。

その記事の中で紹介されていたのが、スローンケタリング癌センターのEthan Basch医師です。Dr. Baschは腫瘍内科医として前立腺がんの治療に携わる一方で、抗がん剤の副作用について、患者と医師、両方の意見の調べており、そのギャップについて指摘しています。副作用の中でも骨髄抑制や肝機能、腎機能の低下などは、血液検査の結果に表れますから医師の判断に間違いはないと考えていいでしょう。その一方、数値に表れにくい副作用もあります。例えば、吐き気や疲労感、痛みの度合いなどは第三者にはわかりにくいことです。しかし現在行われている薬の治験では、ほとんどが医師(またはナース)が全ての副作用を記録・報告する仕組みになっており、患者が直接フィードバックを残すことはありません。

Dr. Baschが先ごろThe New England Journal of Medicineに発表した小論(The Missing Voice of Patients in Drug-Safety Reporting)によると、臨床医の中には患者の副作用症状を軽視したり、割り引いて解釈したりする人も少なくないそうです。(と聞くと一瞬ムッとしますが、ありそうな話ですよね。)スローンケタリングの癌患者さん467人を対象に、疲労感、食欲の低下、吐き気、嘔吐、下痢、便秘の副作用6項目について、患者の自己申告と医師の記録を比較したところ、いずれの項目でも自己申告の方が症状の始まる時期が早く、症状の出る頻度も高いという結果でした。(リンク先のNEJMの記事の一番目のグラフです。オレンジ色の曲線が患者の自己申告、ブルーが臨床医の記録によります。)

Dr. Baschは、臨床医やナースが患者の訴えを割り引いて聞く理由を幾つかあげています。まず彼らとて人間ですから、患者と話す際に多少の先入観があっても不思議ではありません。「○○さんはいつもオーバーだから、疲労度は9点(10点満点で10が一番重症)だって言ってるけど6点につけておこう」という具合です。(西洋社会では物事を誇張する人が多いのも事実です。)また、医師はその病気についての専門家であるが故に、この先副作用がもっと重くなる可能性や、他に副作用がもっと重篤な患者さんを知っていたりします。その知識に基づき、この人の症状はまだそんなに重くないだろうと解釈する場合もあります。さらに、医師の治療効果への希望的観測や治療続行への意欲の表れとして、この程度の副作用ならまだ行けると肯定的に判断することもあり得ます。訴訟社会のアメリカでは、副作用の訴えを逐一カルテに残すと、後々「どうして措置を怠ったのか」などと問題になりかねないので、自己防衛的にあまり細かい記録を取らない医師の方もいるそうです。なるほど。クレーマー対策とは興味深いですね。

治験の結果に至っては、患者談→臨床医の記録→研究者@集計→研究者Aさらなる集計→研究者B情報分析→研究者Cさらなる分析、等々人から人へと伝達されていくうちに、情報が脱落したり誤って解釈されたりすることも起こってきます。副作用の情報が一部欠けたまま承認審査が行われたり、製薬会社が取扱い説明書を作成してしまったら安全性の上で重大な問題となります。

Dr. Baschは、薬の副作用を知り安全性を確認する上で、患者の自己申告と医師のプロ視点からの報告のどちらも欠かせないと述べています。医師の査定は、患者が重篤な病状に陥る可能性を予想する指標となります。患者の生の声は、彼らの日常の健康状態を直接反映しています。映画評で批評家と一般人のレビューを読み比べるのが役立つのと同様に、新薬の開発においても臨床医と患者、両方の意見が参考にされるべきだというのです。驚くなかれ製薬会社もこうしたアプローチを歓迎している様子です。患者から直接フィードバックを受けることで、開発チームが予測していなかった副作用を迅速に発見することができれば対策を練ることも可能です。一度市場に出してから販売中止や製品回収という事態が起これば巨額な損失となることを考えれば、開発時に多少の手間が増えても割に合うのかもしれません。

現在Dr. Baschはアメリカの国立がん研究所(NCI)から委託されて、患者が自ら副作用を報告するシステムの開発プロジェクト(PRO-CTCAE)に取り組んでいます。CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)は、NCIが作った治療に伴う有害事象(副作用や合併症)の一覧及び重症度(グレード)の基準表のようなもので、治験の際に医師が有害事象を記録するのに用いられています。その患者バージョンを作成して自己申告の際に使えば、素人の患者でも主観に走りすぎたり脱線したりせずに、臨床上有意義な意見を出しやすくなるのではないかという試みです。NCIは患者の生の声を取り入れることで、新薬の副作用をより正確に把握することを目指しています。

余談ですが、CTCAEの基準によるとグレード0→全く症状なし、グレード5→死です。(怖〜い!)グレード4は平たく言うと死の一歩手前。グレード3は非常に重い副作用を指すようです。抗がん剤の治験でグレード3以上の副作用が続出するようだと中止になりますが、グレード1や2の副作用はあってもあまり問題にされていないようです。ただ、個人的にはグレード2だって結構辛いと思います。例えば嘔吐は24時間内に2〜5回だとグレード2。下痢は普段のお通じの回数プラス4〜6回だとグレード2。吐き気や食欲不振は著しい体重減少が伴わなければグレード2ですが、ここで言う「著しい」体重減少とは元の体重の20%以上の減少のようです。脱毛や味覚障害は生死に影響ないので最高がグレード2です。ね、グレード2だって2つ3つ重なればかなりQOLに影響がでるでしょ。しかも治療中は3〜4週間おきに繰り返して症状に見舞われるのですから、欲を言えばグレードの基準自体見直してほしいくらいです。PRO-CTCAEが、患者の視点を反映した新薬研究への第一歩となってくれることを願っています。
posted by leo at 15:25| Comment(2) | 海外がん情報(一般) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月02日

花曇り

cherry blossom 2.jpg

近況報告です。
ここ一月ほどの間に色々ありまして、雲行きがちょっと怪しくなっています。

確か3月最後の月曜日の明け方だったと思います。強い腹痛で目が覚めました。卵巣が茎捻転を起こした時のことを思い出し、このまま痛みが増すようならまた救急車か…と気が滅入いりました。痛みは下腹部全体でしたが、ふと指で触ったとき震源地が右の下腹であることに気づきました。吐き気はなく下痢でもなく腹痛だけだったので、そのまま我慢して横になっていること1時間半あまり。ズキン、ズキンと震源地のあたりが一際強く痛んだ後、すぅ〜っと痛みは引いていきました。15分も経つとあんなに痛かったのがウソのよう。これが噂のキドニーストーン(腎臓結石)というものだろうかと首を捻りました。

痛みの震源地だった右の下腹は以前から時々シクシクしていました。シクシクが始まったのは多分去年の秋くらい。でもその頃は微弱なシクシクがたま〜に起こるだけだったので、気のせいかなと思っていました。いや、気のせいではなくて本当にシクシクしているのだと確信したのは2月。頻度が増しシクシク感も強くなってきたからです。ずっと感じているわけではありませんが、日に何回かはシクシクしてるな〜と気づくことが多くなってきました。

タイミング良く3ヶ月おきのチェックアップが4月6日だったので、癌病院のドクターにシクシクと痛みの発作のことを話してみました。診察はいつも通り、耳の下のリンパを触れたり内診(膣と直腸診)をしたりで、その範囲では特に異変は無いとのことでしたが、念のためにCTスキャンを撮ることになりました。定期的にCTを撮ることはなくても、怪しい症状があればすぐ撮ってくれるんだな〜と少し感心しました。なにしろ痛んだ箇所が下腹部ですからね。

そしてそのCTの検査結果を火曜日(4月27日)に聞いてきました。

CT画像によるとダグラス窩の軟部組織に直径0.6cmの小結節があるそうです。以前の画像には写っていなかったので新たに出現した物体のようです。

前述の自覚症状があったので別に驚くことでもなく、さて次は(ドクターが)どう出てくるかと身構えました。(もし治療の話になったら、治療再開はもう少し先にしてくれるようお願いするつもりでした。)

ところがよく話を聞いてみると、小粒ちゃんがあるのはダグラス窩の左側なのだそうです。あれ???シクシクしているのは右側なんですけど…と尋ねると「右側には何も見つかりませんでしたよ」とあっさり言われました。いくらなんでも放射線医が右と左を間違えるわけ…ないですよね。後でCTレポートを読み返しても左側と書いてあるし、腎臓結石も無し、小腸および大腸も異常なし(盲腸でもなかったのか…)という検査結果でした。なにか腑に落ちないというか、狐につままれたような気がします。

で、小粒なんですが、場所的に考えても(ダグラス窩キタ〜)癌の転移、再発の疑いが濃厚であるものの、CT画像だけでは確定できないそうです。

CA125が併用できるともう少しはっきりするのでしょうが、私の癌はCA125にはあまり反応を示さないタイプなのです。2008年秋、皮膚下転移のグリグリが5個も6個も急成長していた最中でさえCA125値は11。ポ〜ンと50とか100とかに上がるような人ならともかく、私の場合はCA125を測定しても信頼できる判断材料にはならない、というのがドクターの意見でした。(激しく同意です。)

なのでとりあえずこのまま放っておいて…じゃなくて経過観察ということにして、6月にまたCTを撮り小粒が中粒に育っているようであれば再発確定ということになります。

とりまとめますと、@右下腹部のシクシクは未だに原因不明、Aダグラス窩左側の小粒は正体不明、というのが現状です。右下腹部は、その後痛み出すことはありませんがシクシク感は続いています。ダグラス窩の小粒の存在を知って以来、がぜん左側もシクシクするような気がしてきましたが、それはどうも気のせいのようです。小粒が癌であろうがなかろうが、要は大きくならなければいいので、そのままのサイズでいて頂戴よと念を送っています。

ところで、ダグラス窩ってDouglas pouchという言葉もあるのですが、cul-de-sac(クルドサック)というオサレな(?)言い回しをすることの方が一般的なようです。お腹の中に閑静な住宅街があるみたいでしょ。語感が良くても実態は変わらないんですけどね。
posted by leo at 17:07| Comment(12) | 日々の生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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