2011年10月06日

9ヶ月の遅れ

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アップル社のSteve Job氏の訃報は世界中を駆け回り多くの人に衝撃を与えました。56歳。本来死ぬような年齢ではありません。さぞ心残りだったと思います。心よりご冥福をお祈りいたします。

生前Job氏は非常にプライバシーを重んじられ、病気についての詳細は公表されませんでしたが膵臓がんでした。癌と診断されたのは2003年10月のことです。膵臓がんで8年生存、しかも亡くなられる6週間前まで世界のトップ企業の一つであるアップル社のCEOという激務をこなされていたとは…やはり凄いと感じられる方も少なくないかと思います。

Job氏の膵臓がんは正確にはislet cell neuroendocrine tumor(多分日本語では膵島細胞がん)という稀な種類の癌でした。普通の膵臓がんと比べるとおっとりした癌らしく、手術で切除できれば10年以上生存する可能性も大いにあると言われています。Job氏の癌は健康診断で偶然見つかり、てっきり普通の膵臓がんだと早とちりしたドクターから余命6ヶ月と告げられました。その後、口からの内視鏡を使って生体組織検査を受け膵島細胞がんであることが判明。Job氏自身は鎮静剤で眠っていましたが、立ち会った奥様によると組織検査をした医師は安堵のあまり涙を流したそうです。

ところがJob氏はすぐに手術を受けませんでした。仏教徒で菜食主義者だったJob氏は西洋医学の標準治療に疑問を持っておられ、食事療法や薬草などで癌を治そうと試みていたらしいのです。アップル社の役員には、分子標的薬の開発/製造で有名なあのGenentech社のCEO、Arthur Levinson氏も含まれ、手術を受けるようJob氏の説得にあたったと伝えられています。誰の説得が功を奏したのかはわかりませんが、Job氏は心変わりされ2004年7月31日にスタンフォード大学付属病院で手術を受けました。癌の診断後9ヶ月以上経っていました。

この9ヶ月の遅れがどんな違いを生んだのかは誰にも分かりません。すぐ手術していれば完治したのか?すぐ手術しても9ヶ月後に手術しても結果は変わらなかったのか?神のみぞ知るです。個人的には、アップル社というテクノロジーの先端を行く企業の創立者が西洋医学に懐疑的だったという点にビックリしたのと、この9ヶ月間にアップル社が大企業としてどう対応すべきか苦慮していた点が興味深かったです。CEOが癌だというだけでもショッキングなニュースなのに代替医療で治そうとしているなんて投資者にどう顔向けすればよいのか… 結局弁護士と相談の上、手術するまで一切を伏せておくことに決まったのだとか。当のJob氏は手術の翌日、病床から従業員全員にメールを出して完治宣言していたそうです。そのメールの中で化学療法や放射線治療は必要ないと述べています。それがドクターの見解なのかJob氏が手術以外は拒否したのかは不明です。

残念ながらJob氏は完治されたわけではありませんでした。いつどんなふうに再発されたのかはJob氏のご家族やご友人、担当医チームしか知りません。知る必要もないことでしょう。2009年に肝臓移植を受けたことだけは報じられています。膵島細胞がんが肝臓へ転移した場合の治療法の一つらしいです。ただしリスクの伴う治療法です。臓器移植をすれば新しい臓器に対して拒絶反応が起きないよう免疫抑制薬の投与が必要となります。そのことから癌がさらに転移、再発しやすい状態になってしまうのです。

Job氏の死の引き金となったのは癌そのものだったのかもしれませんし、肝臓移植の合併症だったのかもしれません。いずれにせよJob氏が果敢に病気と闘われ最後まで信念を曲げなかったのは確かなようです。痛々しいほど痩せてしまわれながらも第一線から退きませんでした。生きるということは単に息をしていることを意味するのではありません。Job氏の姿からそんなことを考えさせられました。

引用元: CNN MoneyForbesReutersApple Insider
posted by leo at 15:45| Comment(2) | 癌になったセレブリティ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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