2009年03月08日

病気が象徴するもの@

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イルネス・アズ・メタファー(Illness as Metaphor)という本があります。
初めて読んだのは14-5年前のことだと思います。とても面白かったという記憶があったので最近また読み直しました。

この本のテーマは病気の医学的な説明ではなく、病気が与える社会的イメージについてで、主に文学作品から例をとって分析しています。特に焦点となっているのが結核と癌です。

結核は抗生物質が普及するまで不治の病気と言われていました。癌は今でも死に至る病だと思われています。怖い病気であるがゆえに様々なイメージ付けをされ、特定の気質と結び付けられたり、社会問題の象徴として用いられたりすることが多い、というのです。

この本の作者スーザン・ソンタグによると、結核も癌も個人の病気で、19世紀以降社会の近代化がすすみ、人間の「個人」としての存在が大きくなるにつれて、関心も増したようです。それ以前は人間は「民衆」という集合体で、ペストやコレラなどの伝染病に地域ぐるみで襲われやすかったのです。(結核は感染しますが隔離は個人単位です。)そして、そうした共通項はあるものの、結核と癌の持つ一般的なイメージが大きく違うことを指摘しています。

結核は、実際にはとても辛い病気だと思いますが、小説、テレビ、映画などの世界では何故か美化されることが多いのです。一方癌は、美化されることが殆どないばかりか、悲惨さを強調されてばかりいます。

イメージだけで言うと、結核患者は繊細でアンニュイ。癌患者は細かいことに悩み落ち込みやすい、と似て非なる性格なのです。結核の治療と言うと、人は高原のサナトリウムを思い浮かべるのに、癌の治療というと手術、放射線、抗がん剤、とロマンの欠片もありません。

言われてみると確かに、時代劇などで、お姫様がゴホンゴホンと咳をして、ほんの少しだけ血を吐いたりしているシーンはよくあります。美しいお姫様の薄幸さを際立たせています。でもお姫様が胸にしこりを発見したり、下腹部の張りに苦しんだり、という話は見たことがありません。お姫様が癌じゃ何かいけないのですか、と聞きたくなります。

続きはまた明日。
posted by leo at 19:13| Comment(0) | 本やブログなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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