2009年05月10日

医者のキモチB

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『How Doctors Think』という本にはガン専門医の話もでてきます。その章のタイトルは”In Service of the Soul”(魂への奉仕)です。ガンの治療が、いかに技術面だけでは片付けられぬ、奥の深いものであるかを物語っているタイトルです。

ガン患者が納得した治療を受けられるか否かは、どんな医者とめぐり合うかにかかっている気がします。有名な専門病院に行けば、検査設備は充実しているし、臨床経験も豊富でしょう。だからといってそこの医者が一番良いとは限らないのです。また他の人の間で評判が良いからといって、自分にとっても良い医者であるとは限りません。医者と患者の相性は治療を続けていく上でとても重要だと、この本は指摘しています。積極的でアグレッシブな人は、強攻な治療をすすめるドクターと馬が合うでしょう。物静かで慎重なタイプの人は、リスクと効果のバランスをとりながら治療してくれるドクターの方が安心できます。もちろん本当に良い医者なら、自分とは価値観の異なる患者でも、その違いを考慮に入れながら、その人に一番合った治療方針を考えるてくれると思いますが。

例として、とても対照的な2人のガン専門医の話がでてきます。
1人は、有名なメモリアルスローンケタリング病院のナイマー医師。ドクターナイマーは失敗を恐れず、少しでも治癒の可能性があればそれを追求するタイプ。「病気の勢いが激しいほど治療も攻撃的になる」と言っては、副作用を恐れる患者を説得する積極派。だからといって、全ての患者に最もアグレッシブな治療を強いるわけではありません。

ある年配の白血病患者の方は、車椅子の奥様の世話をしたり、自分の趣味を楽しんだりすることを続けることを強く望んでいたため、入院を要する集中的な化学療法には乗り気でありませんでした。その意思を尊重しながらも、その患者さんのために何かしてあげたいと考えたドクターナイマーは、エビデンスは少ないものの外来で治療可能な抗がん剤を何種類か試し、病気の進行を9ヶ月間くいとめました。その9ヶ月間に、患者さんは家を売って奥様と養護ホームに引越し、やりたいことを全部やって心残りのない最後を迎えられたそうです。

多くの場合、ガン治療に答えは一つではありません。どんな治療を選択するか、「そのチョイスは患者さんの人生観と調和しなくてはなりません」とドクターナイマーは言っています。

この本で紹介されているもう1人の医師はドクターテプラー。個人の開業医として活躍するドクターテプラーは、血液腫瘍と普通の腫瘍、両方の専門家です。ドクターテプラーのクリニックに来る患者さんの多くは、ガンが非常に進行した状態です。「患者さんが無益な治療で苦しまないようにしてあげることは、自分にできる最も重要なことの一つではないかと思うことがあります。」と話すドクターテプラー。根治することのできない癌を、上手にコントロールして長く共存していけるような治療を得意としています。

それでは満足できず、もっとアグレッシブな治療を受けたくて他の医師のところへ走る患者さんもいるそうです。そのアグレッシブな治療が失敗して、ボロボロになって戻ってくる患者さんを暖かく迎え入れることもよくあります。

ドクターテプラーとドクターナイマーは気質もアプローチも対照的ですが、共通点が一つあります。お二人とも最後の最後まで患者を見捨てないということです。

ドクターテプラーが癌という病気を専門に選んだ理由は、病気の難しさ故に、特別な深い人間関係を患者との間に築くことができるからでした。長年病気と闘ってきた患者さんに、ある時点でもうどんな抗がん剤も効かなくなり、それ以上化学治療を続けても意味がなくなる日が来ます。そんな時ドクターテプラーは、最後まで支え続ける、残った時間を快適に過ごせるよう出来る限りのことをする、と約束するのだそうです。

ドクターナイマーは癌を治療する術がつきてしまったからといって、治療をやめるわけではない、と考えています。事実、終末医療は癌治療の中でも最も難しい分野なのです。緩和ケアや痛み止めを施しながらも、家族や友人と話が出来なくなるほど意識が朦朧としないよう、微妙なバランスを取らなければなりません。精神面でも、真実をゆがめることなく伝えながら、なおかつ患者さんの心が安らぐようサポートする、というのは口で言うほど簡単なことではないでしょう。

スクリーニングや治療法がすすみ、ガンになっても完治する人は沢山います。でもそうでない人もいるのです。そういう病気だからこそ医学知識や治療技術だけでは不十分なのです。患者を疾患としてでなく、心と魂を備えた人間全体として捉える優しさと懐の深さが、ガン専門医には求められるように思います。
posted by leo at 17:22| Comment(5) | 本やブログなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつもなるほどと思いながら読んでいます。

かなり以前から私が読んでるブログなのですが、かなり勇気を与えてもらえるのではないかと思いますのでここにアドレスを書いておきますね。
http://blog.goo.ne.jp/eeyan1104/(明けない夜はない)
最近は症状も安定してきてブログの更新も少なくなりましたが、癌との共存中です。

http://blog.goo.ne.jp/eeyan1104/ (みづきの直腸癌からの復活)
残念ながら去年亡くなってしまいましたが、彼女のブログを見て泣いたりがんばれと応援したり。掲示板も充実していろんな情報が得られるのではと思います。

すでに読んだ事があるかもしれませんね。 他にも素晴らしいブログがあるとは思いますが・・・
Posted by でいご at 2009年05月11日 05:19
癌治療を始める前に、もっとカウンセリングをしてもらいたかったと後悔しています。
手術のことや、抗がん剤治療について、もっと医師と話し合いたかったです。
私は後遺症のことを考えると、そこまでしてまで生きる価値があるのかは、
今となっては、はっきり言って疑問を持ちます。
もちろん、治療時の副作用については説明がありました。
でも後遺症については、時間がないということや、個人差が大きいということもありますが、
ほとんど述べられませんでした。
私は、癌発覚から手術まで、時間があまりに短かったので、十分調べることが出来ませんでした。
でも、これから癌治療を始める方には、もっと治療を選択してほしいと思います。
leoさんの抗がん剤治療の選択も、どう結果が出るかはわかりませんが、
それはそれで正しい選択のような気がします。
Posted by yoshiko at 2009年05月11日 11:06
でいごさん、
他の人のブログを読むのも好きなのですが、ランキングにでているような
有名なのしか知りませんでした。
でいごさんに教えていただいたブログも読んでみますね。
ありがとうございました。
Posted by leo at 2009年05月12日 09:24
yoshikoさん、
身体の調子、まだいまいちなんですか?
治療回復に時間のかかる人も大勢いるそうですが、やがては体調も
元に戻るらしいですよ。

私の場合、tumor(腫瘍)はどこにもなかったものの、deposits(沈着物)や
nodule(根粒)はあちこちある状態だったので、医者も私も寛解は目指して
いても、完治はないものと考えています。だから化学治療も将来(いつになるか
はわかりませんが)2度目、3度目があることを念頭に入れています。だから
今回あまりボロボロになってしまうと、かえって寿命が縮むかもしれない
ということも考えました。

タキソールを加えることのベネフィットは、治験の結果を生の数字で見ると
あまり大きくなかったので、単剤を選んだことに後悔はありません。

医者は治験の結果など話してくれません。自分で調べるしかないのです。
また抗がん剤の副作用の中にはirreversible(元に戻らない)なものもあります。
その点も医者は明らかにしないことが多いようです。

ちなみにステージIA、Bの場合、カナダやヨーロッパでは術後の化学治療は
全くなしのケースが多いです。日本とアメリカはそれでも化学治療をする
と聞きました。国によってスタンダードが違うようです。



Posted by leo at 2009年05月12日 09:48
私は、手術でMenopauseになってしまったので、更年期障害はひどいのなんのって・・・
Chemoが終わった頃までは、ホットフラッシュもそんなにひどくなかったのですが、
手術1周年を迎える少し前頃から、ひどい時は、一日中、帽子をかぶっている様に頭が熱く、
まるでサウナの中にいるようです。
でもホットフラッシュの時、汗が以前のように出ないんです。
2〜3分で終わっていたものが、一日中、暑くって・・・暑いのなんのって。
頭にアイスをのせてないと、耐えられませんって感じ。
それでたまりかねて、漢方を処方してもらいました。効いてくれるかなあ。
何かホットフラッシュに、有効な方法があれば教えてくださいね。
Posted by yoshiko at 2009年05月13日 10:27
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