2011年04月11日

トリセルって何?

Cardinal.jpg

日本では今も震災の傷跡が生々しく、原発問題や頻発する余震(にあたるのかな?)で不安な毎日を過ごされている方も多いかと思います。心よりお見舞い申し上げます。私の方はブログを放置気味ですが一応元気でやっております。カナダにもようやく春の兆しが見え始めましたが桜が咲くのは例年5月の初旬です。4月でも雪が降ることがあるので油断できません。

さて本題です。

トリセルという名前の薬を聞いたことがありますか?Toriselは商品名で、一般名はTemsirolimusです。2007年にアメリカのFDA(食品医薬品局)が、腎細胞がん(腎がん)の治療用に承認した薬です。見つかった時に既に進行しており、予後が厳しいと見なされた腎がんの患者さんを対象にした治験では、TemsirolimusのOS(全生存期間)が10.9ヶ月、既存治療薬のインターフェロンαのOSが7.3ヶ月と統計的に有意な差をつけて薬効を示しました。

腎細胞には幾つか組織型がありますが一番多いのは明細胞だそうです。そんなことから明細胞の卵巣がんにも効果があるのではないかと期待されています。と言ってもまだ研究データ不足で確かなことは不明です。それどころか、腎がん以外の何の癌に効くのかさえ未だ特定できておらず、卵巣がんを含めた複数の固形癌をひとまとめにした治験が行われていたりするほどです。私の病院では、卵巣がん、子宮内膜がん、肝臓がんなどの患者さんを対象に、トリセル+アバスチン併用の治験が進行中です。

昨年のASCO(米臨床腫瘍学会)の総会で、日本の医師グループが明細胞の卵巣がん患者にTemsirolimusを投与した結果を発表しました。しかし対象となったのはたったの6名。残念ながら数が少なすぎて、エビデンスのレベルとしては代替療法などと大差ないような気がします。ともあれ6名のうち3名は部分奏効。2名は腫瘍の成長が一時ストップ。残る1名は効果なしでした。PFS(無進行期間)の中央値は6ヶ月。興味深いのは、薬の効果が高かった人ほど副作用が軽めだったということです。

TemsirolimusはmTORキナーゼの細胞内シグナル伝達を阻害します。と書いてみましたが詳しい仕組みは文系の私には難解すぎます。このシグナルがないと細胞が成長、増殖しにくくなるんです…よね?とうっすら理解できる程度です。いわゆる分子標的薬とは異なる範疇となり、免疫抑制など副作用も決して少なくはないようです。

カナダ、ブリティッシュコロンビア州の癌センター資料によると、主な副作用は以下の通りです。

貧血(赤血球減少)45〜94%(幅があるのは治験によって差があったため)
血小板減少 14〜40%
体力衰弱 51%
吐き気 37%
食欲不振 32%
口内炎 20〜41%
発疹 47%
免疫低下による感染 20〜27%
ポッタシウム減少 21%
中性脂肪増加 27〜83%
コレステロール増加 24〜87%
血糖値の上昇 16〜89%
クレアチニン値の上昇 3〜57%

その他、下痢や発熱、肝機能障害、呼吸困難なども報告されています。またアレルギー反応を起こす人が多いので、事前に抗ヒスタミン剤を投与することが勧められています。

見た感じ、お馴染みの殺細胞系の抗がん剤といい勝負の副作用ですね。この薬の方が代謝異常は多いみたい。でも代謝異常は薬で抑えればいいのだから、髪が抜けるよりいいのかしら???海外の掲示板など読む限りでは、「3年もお世話になってます」と言う人から「全然効きませんでした」と言う人まで様々です。まぁそんなもんでしょうね。

治験の枠外でトリセルが卵巣がん治療の選択枝の一つに加わるのかどうか…それがわかるのはまだ大分先のことだと思います。それが待てない人は治験の有無を調べたり、日本の場合は個人輸入もできるのかな?いずれにせよリスクも大きいことを考慮の上決めて下さいね。
posted by leo at 20:57| Comment(4) | 抗がん剤(一般) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トリセル、腎細胞がん治療薬ですね。
今はもう亡くなられましたが、同じ卵巣がんの友人が、標準治療は無論保険外でも
効く抗癌剤がなく、トリセルを打ちました。
彼女の組織型は漿液性と明細胞の混合で、明細胞がネックなのか??
いずれの抗癌剤も
さしたる効果が無いままマーカーは上昇・・・
何故にトリセルか・・は、腎細胞がんの明細胞と卵巣がんの明細胞は
病理で診ると酷似しているから期待できるのでは??と。
しかし上記の副作用を読ませて頂くと
従来の細胞毒の抗癌剤に匹敵する
様な感じですねぇ・・

まぁ日本では、トリセル認可などは
夢の夢。ドキシルに続き、ジェムザールと
ハイカムチンの認可は早かったのは
驚いてはいますが・・・

以前アバスチンの事でコメントさせていただきました。
あの頃は寛解でしたが・・・去年再再発しました。
ロングサバイバーですから、ある意味再発運命かな。
保険内の治療はまだまだあったのですが
完治のないがんに、生きる時間が限られた人生に
まずはQOLの良い治療を!!と。
主治医快諾の下に、個人の医療機関に移り、DDS剤とアバスチンを使いました。
アバスチンは見事?な薬です。まぁ血圧上昇(降圧剤処方)と
鼻血(痛くも痒くも無いし♪)はありましたが、殆ど血液毒性はなく
マーカーも見事に下がりました♪お財布は軽くなりましたが(^へ^)

Posted by 海愛 at 2011年04月12日 00:46
海愛さん、お久しぶりです。
アバスチン、試されたのですね。稀におこる重篤な副作用の
せいで危険視する人もいますが、使った大部分の患者さんは
副作用が軽いって言ってます。私も使ってみたいです。
海愛さんは長期の寛解期間を経てきた方なので、ここから先も
長いでしょうね。私なんか癌と診断されてから約3年で
体内に癌がなかった期間はほとんどないですよ。
それも常に肉眼で見える状態なのでマーカーは用無しです。

トリセルについては認可するもしないも、効くのかどうかが
判明しないことには話になりません。日本でも治験が増えると
いいですね。欧米のデータだけで承認するかどうか決めていたら
発展途上国みたいですものね。
製薬会社が治験しやすい環境作り。また欧米のように
政府からの資金援助、一般市民からの寄付で癌研究を
2歩も3歩も進めてほしいものです。
Posted by leo at 2011年04月14日 15:54
leoさん、お返事有難うございます。
アバスチン投与にあたり
日本のがん治療の司令塔??の役目を担う様な病院に
セカオピに行きました。

一通りの保険内治療のセカンド、サード治療の話。
私にはまだまだ小物?ながら、未投与の薬があり、その話を聞きながら(充分分かってる内容で)
突っ込んで「保険外治療では??」
まずいんだよね、その話は・・・でもね」その心積もりがある事、先生の様のような
婦人科がんに長けた方にそこら辺の話も聞きたい!と,よいしょ!!
「患者さんは必死だよね・・・うん、分かるよ。
辛い思いもたくさんしたよね・・・」の温かい言葉に、ウルウルしました。
以下はそのドクターの話の要約と言うか、何故にアバスチンか!という事です。


再発はCA125の上昇によって診断され、他のメルクマークがある
人はそれを注視。マーカーがでない人は画像診断←当然な措置。
初回の化学療法後にCA125が上昇し、再発を疑われた時に抗癌剤を始めるのと
痛みや腹水・・等、諸症状が出た時から抗癌剤を始めたのとでは
生存期間が変わらなかったという報告、一昨年ASCOで報告されましたよね。
と言う事は、卵巣癌の患者さんは初回の化学療法が終わったあとは
フォローアップ外来などせずに、マーカーも計らず症状が出たら、
再発治療をしなさいと言う事になります。これは無謀だよね・・
  私も「私も怖くてできませんが
生存期間に差が無いなら、マーカーを聞くストレスがないかな?と感じる部分もありますが・・」
そこでアバスチン・・
腫瘍に行く血管は腫瘍が1-2mm3以上になると、がんも生きていく必要上新生血管を作り出す。腫瘍血管が出来たらそこから栄養が腫瘍に行きわたり、増殖が加速する。ASCOの発表は従来の細胞毒性抗癌剤を使用していた時代はこの結論は正しいでしょう。しかし非常に有効な分子標的薬が出現している時代にはそぐわない報告だと思う。私はCA125が上昇し始めたらできるだけ早く分子標的薬を含む化学療法を始めなさいというのが
結論でした。


Posted by 海愛 at 2011年04月18日 09:37
海愛さん、
再コメントをいただいたのに気付かなくてすみません。

「卵巣癌の患者さんは初回の化学療法が終わったあとは
フォローアップ外来などせずに、マーカーも計らず症状が出たら、
再発治療をしなさいと言う事になります。これは無謀だよね・・」
↑日本人の感覚からしたらさぞ無謀に思えるでしょうね。
カナダとかイギリスとかでは普通にやってますよ。(笑)

海愛さんが面談されたお医者様のおっしゃったことは
昨年11月28日に書いた「再発治療の始め時」の内容と
被っているような気がします。再発治療の早期開始が
生存期間を延ばさないという研究結果は、分子標的薬が
出現した時代にはそぐわないという反論も、そちらの
記事に引用元を載せてあります。ただその反論を
Lancetに投稿したアメリカのドクターは製薬会社から
研究資金やコンサルタント料を貰っているようですが…
海愛さんが会ったお医者様は、そのLancetの記事に
賛同されているのでしょうね。



Posted by leo at 2011年04月26日 16:44
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。