2010年12月14日

癌と糖尿病(前編)

昨日の夕方は雨がしとしと降って12月にしては暖かかった(気温2℃くらい)のですが、その後すごい勢いで寒波が到来し今朝は氷点下7℃。今夜は氷点下14℃まで下がるそうです。冬だから仕方ありませんね。それにしてもよ〜く冷えてます。

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(これより本題)

癌と糖尿病はどちらも現代人に多い病気です。共通するリスク要因も多く、2つの病気の間に何らかの相関関係があるのではないかと訝る学者さんもいるようです。そこでアメリカの癌協会(American Cancer Society)と糖尿病協会(American Diabetes Association)がジョイントでコンファレンスを開き、この点に関する様々な研究が発表されました。昨年12月のことです。つまるところ、「癌と糖尿病の関係は更なる研究を要する分野である」という肩透かしをくわせる結論に至ったようですが、現時点で判明していることを広範囲に集め、秩序立てて分析が試みられました。

(注:文中の糖尿病は2型糖尿病を指します。)

1.糖尿病と癌の罹患や予後との関係

ご存知の通り癌は部位によってリスク要因も予後も異なり、十把ひとからげにして語るわけにはいきません。ヨーロッパで行われた疫学調査によると、糖尿病で罹患リスクが上がるのは肝臓がん、膵臓がん(どちらも2倍以上)、大腸がん、乳がん、膀胱がん(1.2〜1.5倍くらい)だそうです。糖尿病は血糖を調節するインスリンの量が少なくなったり正常に作用しなくなったりする病気。特にインスリン抵抗性と呼ばれるタイプの糖尿病および予備軍の場合、身体がインスリンへの感受性を失ってしまうため、膵臓が延々とインスリンを分泌し続けインスリン過多の状態(高インスリン血症)になります。分泌源の膵臓だけでなく通過地点の肝臓も大量のインスリンにさらされるので、それが発がんに影響を与えているのではないかという仮説が立てられています。

また癌と糖尿病と両方患っていると、癌だけの人より予後が厳しくなる傾向が幾つかの調査で示されました。まあそれは癌ひとつでも十分手強い相手なのに、既往症があったらさぞ大変だろうと想像はつきます。例えばカナダ、オンタリオ州の疫学調査によると、乳がん+糖尿病の人は乳がんのみの人と比較して5年以内に亡くなる確率が39%高かったそうです。と言っても、この手の研究は調べる度に結果が変わったりするので、自分は両方だからダメだ…と悲観するのは止めた方がいいと思います。

2.癌と糖尿病に共通するリスク要因

生活習慣がらみのリスク要因のみ抜粋しました。

肥満
ここで言う肥満はBMIが25以上の人を指します。女性だったら身長155cmで体重60kg以上とか…本格的な肥満のことです。日本にはあまりいないでしょうが欧米では珍しくありません。肥満と糖尿病との相関関係は明らかです。健康的な食生活や運動も、それ自体が糖尿病を予防すると言うよりも肥満防止や体重減少に繋がるから効果があると言った方が正確でしょう。極端な話、手術で胃を小さくして痩せても良いわけで、実際に肥満手術は糖尿病の効果的な治療法として欧米で用いられてます。手術で激やせした人の78%は糖尿病が治ってしまった!という驚くべき統計もあります。

癌と肥満との関係はそれほど単純ではありません。多少なりとも肥満が関係しているらしいのは乳がん、それも閉経後に乳がんになるリスクです。閉経後は脂肪の中でエストロジェンが生成されると聞いたことがあります。とすると、ふくよかな人ほど女性ホルモンが豊富、ゆえに乳がんになりやすいのかもしれません。ただ糖尿病と比べたらリスクの増し方はささやかで、痩せている人でも癌にはなります。その上、癌になったことが原因で体重が減ることもよくあるため、痩身の癌予防効果を検証するのは困難です。

食生活
食生活と癌のリスクについては、基本的に関係有りと見るのがコンセンサスのようですが、具体的に何がどうなのか、になると医学的に立証されている事柄は決して多くありません。欧米で一般的に勧められているのは、赤いお肉(牛、豚、羊)と加工肉(ハム、ソーセージの類)は控え野菜を沢山食べる、ということくらいです。それもあくまで発がんリスクを減らすためであって、食事療法で癌を治すという発想は正統派の西洋医学の範疇にはありません。一方、糖尿病においては低脂肪、低カロリーの食事療法が代表的な治療法のひとつです。狙いは異なっていますが、癌のリスクを減らすためでも糖尿病のリスクを減らすためでも、結果的には似たような献立になるような気がします。過食や脂っこいものは避け野菜中心の健康的な食生活を心がけるということですよね。問題は、そうすることで糖尿病はかなりの確率で予防、コントロールできるのに、癌はどんなに生活習慣に気をつけてもなる時はなってしまう件。頭が痛いです。

その他、運動に関しては乳がんや大腸がんなどのリスクを低減すると言われていますが、糖尿病ほど著しい防止効果はないようです。糖尿病は1日30分の穏やかな運動(ウォーキング等)を週に5回で約25〜36%の罹患リスク減。これは疫学調査だけでなく臨床試験でも確認されています。ただ肥満の糖尿病患者がせっせと運動をしても痩せなかった場合、それでも効果があるのかどうかについてはクエスチョンマーク付きです。煙草とお酒は糖尿病予防の見地からもほどほどにすべきですが、発がんリスク要因としてはトップクラス。共通しているようで微妙な違いがあります。

肥満で運動不足、こってりしたものや甘いものが大好きで間食も欠かさない。お酒を飲み煙草を吸い、絵に描いたような不健康な生活を送っている。そして糖尿病持ち。な〜んて人がある日癌になったとします。色々なリスク要素が混ざり合っている中、何が特にその人の癌の引き金になったのか知ることは不可能です。もちろん何の癌になったかによっても話が変わってきます。仮に糖尿病との因果関係が疑われたとしても、高血糖、高インスリン血症、インスリン抵抗性など、糖尿病にまつわる様々な代謝異常の内、どの要因が発がんに最も関与しているのか… まだまだ不明なことだらけです。個々の因子別にじっくり疫学調査を行うには長い年月がかかるでしょう。

(以下後編に続きます。)
posted by leo at 17:52| Comment(2) | 海外がん情報(一般) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月04日

甘党の曲者

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癌は糖分を好むという話を時々耳にします。と言っても、甘いものを食べるから癌になるとか、食べなければ再発しないとかいうほど人間の身体は単純な作りではないようです。癌細胞と代謝、及びそれに干渉することで新しい治療法を開発しようとする取り組みなどについて、とてもわかりやすい記事がニューヨークタイムスに載っていたので概要を紹介させていただきます。

グルコース(ブドウ糖)は確かに癌の大好物ですが、正常な細胞だってグルコースを栄養源にしていることには変わりません。特に脳はグルコースを沢山消費することで知られています。癌を太らせたくないばかりに摂取カロリーを減らしても、血糖値が正常以下にならないよう身体は一生懸命に調節します。そして癌は血液中のグルコースを美味しく頂いてしまいます。仮に体内のグルコース量が乏しくなっても、癌は正常細胞よりも貪欲なので栄養素にあぶれることはまずないと見て良いでしょう。糖分摂取を制限することで癌を兵糧攻めにしようとしても残念ながら効き目はなさそうです。

そこで癌細胞の代謝に照準を合わせて干渉することで癌の弱体化を図る、というアイデアが生まれました。エネルギー代謝には、酸素が十分ある状態で行われる好気的解糖と酸素がない状態で行われる嫌気的解糖と二通りあります。(この辺化学に弱い私には難しいのであまりつっこまないで下さいね。)普通の細胞は好気的解糖を行う場合が多いですが、激しい運動をしている時などには筋肉中に蓄えられたグルコースを嫌気的解糖してエネルギー源とするらしいです。へそ曲がりの癌細胞は酸素がある状態でも嫌気的解糖を行う傾向があり、癌の代謝の特徴の一つと考えられています。これを発見したのは1931年にノーベル賞を受賞したドイツの生化学者オットー・ワールブルク(Otto Warburg)です。臨床への応用に80年かかっているってちょっと長すぎ!と思わず苦笑しました。

もちろん実際はもっと複雑で、癌細胞の全てが嫌気的解糖をしている訳でも、正常細胞が全く嫌気的解糖をしない訳でもありません。よって癌細胞だけにダメージを与える薬を開発するのは一苦労なのです。例えばPETスキャンの検査薬(FDG)の様な擬似グルコース(但し放射性物質抜き)を治療目的で使おうという試みがあります。2DGと呼ばれるこの人工グルコースは、偽者だけあって代謝されないことから癌のグルコース代謝をブロックすることを期待されています。しかし、そのためには検査に使われるよりもずっと多い量が必要となり、どうやって大量の擬似グルコースを腫瘍に着弾させるかが課題のようです。

また、従来の抗がん剤とグルコースを混ぜた毒入り団子みたいな薬の開発をしている製薬会社もあります。Pyruvate Kinase M2といった癌の糖質代謝に係わる酵素を阻害する薬も研究されています。こうした新しいアプローチは主に一攫千金を狙う小さな製薬会社によって進められていますが、先ごろ大手のアストラゼネカも癌の代謝阻害薬(AZD-3965)の治験を開始すると発表しました。

少し毛色の違う薬としてはDCAがあります。DCA(ジクロロ酢酸)は、飲料水の塩素殺菌の副産物として生成される化学物質です。Pyruvate Dehydrogenase Kinaseと呼ばれる酵素を抑制することで代謝の仕方を、細胞質で行われ乳酸を産生する嫌気的解糖→ミトコンドリアで行われる好気的解糖、と変える働きがあります。後者の方がエネルギー生産効率が高いので癌のテンションが上がるかと思いきや、ミトコンドリアが元気になると癌は勢いをなくしてアポトーシス(細胞死)を起こす…少なくとも理論上はそういう仕組みです(多分)。

DCAは以前から、乳酸過多などミトコンドリアの機能不全によって起こる稀な疾患への治療に使用されており、人体への危険性は少ないそうです。癌細胞に対する効果は、カナダのアルバータ大学のDr. Michelakisによってマウスを使った実験で確認されました。新しい物質ではないのでパテントで大儲けできる見込みはなく、製薬会社の食指は動かないようです。それを逆手に取り、人間の臨床データが乏しいにもかかわらず独自で製造してネット上で売る輩が出現した他、日本でも一部の代替医療系のクリニックで処方されていると聞きました。当のDr. Michelakisは非常に慎重で、きちんと臨床試験をして効き目を確認するべく、公的な医学研究財団や政府の関係機関と掛け合い研究資金集めに勤めている最中です。

癌の代謝をターゲットにした治療薬の研究は始まったばかりで、分子標的薬に続くヒットになるのかどうかまだわかりません。上手くいけば癌治療がまた一歩前進することになるので成功を祈るのみです。
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2010年11月28日

再発治療の始め時

冷えるな〜と思っていたら夜の間に雪が舞っていたようです。道路に降った雪はさすがにすぐ溶けてしまいましたが、草地の上は白い粉をまぶしたような状態で昼間日が照っても消えません。今年は暖かかったので雪も例年よりは遅めです。

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(ここから本題)
癌は再発しないのが一番です。でも、もし再発してしまったら治療はいつ始めるべきなのでしょうか。一刻も早く発見して、すぐさま癌を叩きたいと思っている人が多いのではないかと思います。ただ再発卵巣がんに関しては、治療開始が早すぎてもメリットがないという意見のドクターもいらっしゃるようです。もちろん個人差はあるでしょう。動きの早い癌、のんびりした癌。長い寛解の後再発した癌、短期間で再発した癌。答えは一つではないのかもしれません。

日本でもよく知られている医学雑誌「The Lancet」に、再発治療の開始を多少遅らせても生存期間に違いは出ない、という研究結果が発表されたのは10月初めのことです。この臨床試験はヨーロッパで1996年に始まり、約9年間に卵巣がんの患者さん1442名が参加しました。初期治療を終え経過観察に入った人達のCA125を3ヶ月に1回測定して、数値は臨床医にも患者にも伏せておくという方法を取りました。そしてCA125が正常値上限(多分35)の2倍以上に上昇した529名を無作為に2つのグループに分け、一方のグループでは速やかに再発治療開始。もう片方のグループでは症状が現れるまで無治療で経過観察を続けました。2つのグループの治療開始時期の差は4.8ヶ月。早期開始組はトータルで受けた化学治療の回数が遅延組より多く、サードラインの治療を始めた時期も4.6ヶ月早かったそうです。それでも再発後の全生存期間の中央値は、早期開始組が25.7ヶ月、遅延組が27.1ヶ月とほぼ同じ。この結果をふまえ、研究を担当したドクターは経過観察中のCA125測定の意義について疑問を投げかけています。

イギリスのDaily Mail紙に載った記事では、治療遅延を歓迎する患者さん、心配する患者さん、双方の意見が紹介されています。治療遅延を支持する理由は、体調がいいのに数値が上がっただけで治療を再開するとQOLが下がり、治療を受けるだけの人生になってしまうから、と個人的にかなり頷ける内容です。しかし、CA125が上昇すると間もなく腹水が溜まってお腹がパンパンになり苦しい思いをするので、それを待たずに先手を打って治療を始めてほしい、という意見の人もいました。やはり人それぞれのようですね。

さて、上記の研究結果に対して異議を唱える声が上がったのは、万事において積極的な攻めを好むアメリカだったのは自然の成り行きでしょう。反論の趣旨としては、臨床試験で治療に用いられたのはカーボプラチンやタキソールなど、ありきたりの抗がん剤ばかりで最新の分子標的薬、血管新生阻害薬が使われなかった。言い換えると、再発治療の開始時期で予後に違いが出なかったのは古臭い治療法のせいだ、と言いたいようです。暗にヨーロッパの癌治療はアメリカより遅れているとほのめかしている感じです。そればかりか、ヨーロッパのような公的な健康保険制度の下では、自由の国アメリカのようにあらゆる薬を試すことができないからだ、とそこまではっきりとは言いませんでしたが、チクチクと嫌味っぽく突いていました。

ちょっと感じ悪いですが、もしかしたら当たっている部分があるかもしれません。ただし、この反論を共作で執筆し「The Lancet」に投稿したアリゾナとミシガンの二人のドクターは、両方とも多数の製薬会社から研究資金、コンサルタント料、スピーチの謝礼など受け取っています。(「The Lancet」を含む欧米のきちんとした医学雑誌では、研究者や論文の著者と外部団体との金銭的な結びつきを公表するのがルールなので、こういう世知辛い事実もむきだしです。)

CA125が上がったの下がったのという話は、個人的にはどうでもいい…というか自分とは関係ないことのように感じ、一喜一憂したこともありません。何し私の場合、直径3cmくらいの癌が4つも5つも急成長していた時でさえCA125は上昇しなかったのです。現在もCTの画像には小粒が写っていますがCA125値は6。ひと月程前、試しに一応測ってみましたが注射のされ損でした。CA125値の上昇を治療開始の判断材料にするとしたら一生治療は受けなくてすみそうです。そういう意味ではCA125重視の意見の方が私にとって都合がいいような気がします。

(追加リンク:本文で取り上げたCA125と再発時期の臨床試験に関するもう一つ別の割と詳しい記事
posted by leo at 10:08| Comment(0) | 卵巣がんニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月20日

乳がんブレスレット騒動

アクセス数を見ると、抗がん剤や治療法の海外での研究に関する真面目な投稿を読んで下さる方が多いようです。が、ここ最近忙しくきちんと調べる時間もないので、今日はトリビアの泉のような軽い小ネタで失礼させていただきます。

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写真のブレスレットは、The Keep A Breast FoundationというカリフォルニアのNPOがキャンペーン用に販売しているものです。この団体は、若い世代(主に10代)における乳がんの認識強化を目的としており、早期発見や罹患リスクの低減について理解を深めるよう啓蒙活動を行っています。相手がティーンエイジャーだからなのか、それとも団体を立ち上げた人の趣味なのかはわかりませんが、ノリがファンキーでヒッピー風であります。

で「i ♥ boobies!」と書かれたブレスレットですが、ゴム製で1個3.99ドル、6個入りパック22.99ドル。The Keep A Breast Foundation特約のオンラインストア等で売られており、中/高校生の間でなかなか人気を集めているようです。乳がんの認識を向上するために役に立つかどうかは疑問ですが、別に害はないと思いきや、実はこのブレスレットが物議を醸しているのです。

問題は「boobies」という言葉。日本語にするなら「おっぱい」という感じでしょうか。「breasts」即ち「胸」と言うのに比べると「boobies」はお下品な表現。(若い人は普通に使う言葉なんですけどね。)従って「i ♥ boobies!」を訳すと「おっぱい大好き!」になります。そのため、あちこちの学校で着用禁止となっているのだそうです。挑発的な表現は教育現場にそぐわない、というのが禁止にした学校側の言い分です。このブレスレットを着けていたために停学になった生徒もいるのだとか。アメリカの(カナダも同様ですが)ミドル/ハイスクールは制服のない所がほとんどで、日本と比べると校則もゆるいという印象がありますが意外と固い面もあるのです。

さらに驚いたことに、停学になったことを不服として学校を相手に訴訟を起こした人まで現れました。ペンシルバニア州の中学生、Kayla Martinezさん(12歳)とBrianna Hawkさん(13歳)は、学校の乳がん認識デーである10月28日に「i ♥ boobies!」のブレスレットを着けて登校しました。学校で禁止されてはいるものの両親の許可は得ていました。初めは一応シャツの袖で隠していたのですが、何せ中学生。昼食時には大っぴらにブレスレットが見える状態になっていました。そして風紀の先生に見つかり停学処分。そればかりか学校主催のダンスパーティーへの参加も禁じられてしまいました。

乳がん認識デーに乳がん認識向上を呼びかけるブレスレットを着用して処罰されるとは何事ぞ!と怒ったのは2人のお母さん達。American Civil Liberties Union (アメリカ自由人権協会)を通して、言論の自由の侵害を理由に学校側を訴えることにしました。

笑い話ではないんですよ。訴訟社会ですからね。因みにKaylaさんとBriannaさんにとってはダンスパーティーに行けないことが一番ショックだったらしく、裁判長が学校当局にパーティー参加を許可するよう命じてくれることを期待しています。

アメリカ、カナダでは女性8人に1人の割合で乳がんになります。中学生といっても家族、親類、近所の人、友達の家族といった身近な人間の誰かが乳がんになっている確率は少なくありません。また白人、黒人の子供は発育が早く13〜14歳で大人の体型に近づきます。昨年5月にはカリフォルニアで10歳の女の子が乳がんと診断される病例が報告されています。子宮頸がん同様、乳がんについても若いうちから正しい知識を身につけさせておくべきなのかもしれません。

ただ「i ♥ boobies!」キャンペーンについては、深刻な問題を単純化、矮小化しすぎている、と批判の声も上がっています。オープンに扱うことで一昔前の癌の暗いイメージが払拭され、癌になったことを恥じたり隠したりする人が減るのは良い傾向ですが、度が過ぎるのは考えものという事だと思います。このままエスカレートして「乳がんってセクシー!」などという、とんでもない勘違いがティーンエイジャーの間で広まらぬことを祈るばかりです。

(元にしたのはTIMEの記事です。)
posted by leo at 17:24| Comment(0) | 日々の生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月13日

コインの裏側

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2週間ほど前、従兄弟同士でメラノーマになった男性の話を書きました。一人は開発途中の新薬で日常生活に復帰できるほど回復し、もう一人は臨床比較試験で標準治療薬に当たってしまい新薬が使えず亡くなってしまうという悲劇についてでした。これはどちらかと言うと特殊なケースのように思います。何故かと言うと、他の癌と比較しても、進行/転移したメラノーマは普通の抗がん剤が非常に効きにくい上、件の新薬は特定の遺伝子変異を持った人だけに劇的な効果をもたらすタイプの薬だからです。

ともあれ治験/臨床試験の厳しい枠組みが、有望な新薬へのアクセスを時に難しくするというのは何か割り切れない感じがします。その一方で、臨床試験が済んでいない治療法(即ち薬効や安全性が不確か)を試験の枠外でバンバン使用することにも問題があるようです。

米デューク大学の研究者が先ごろ発表した調査によると、2006〜2008年の2年間に英語圏で行われたフェーズIIIの治験/臨床試験の内、63%は全く新しい実験薬ではなく既に他の癌の治療に使われている薬でした。加えて11%が治験中に他の癌の治療薬として承認されていました。わかりやすい例を挙げるなら、何年も前から大腸がんの標準治療の一部であるアバスチンを、卵巣がんに使用して効果を見るといった治験を指します。癌の種類や進行度、併用する薬が変われば薬の恩恵の度合いや有害事象も異なってくる可能性があり、当然チェックを要する訳です。

で、ここから先は主にアメリカでの状況になりますが、以前も何回か書いたように、薬を「off label」で使うという慣習が癌の治療現場でも広範囲で見られます。薬のラベルに記されている用途以外に使う、言い換えるとFDA(米国食品医薬品局)が承認していない用途に使ってしまうことです。アバスチンは卵巣がんに対しては実は未承認なのにもかかわらず、かなり前からoff labelで(治験の枠外)使用されており、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)のガイドラインにも既に含まれています。ジェムザールも承認が下る前からoff labelで卵巣がん患者に投与されていました。一説によるとアメリカの腫瘍内科医の80%以上はoff label薬を化学療法に取り入れることがあるそうです。民間の保険会社が主導権を握るアメリカ独特の健康保険制度においては、腫瘍内科医と個々の保険会社との交渉次第でoff labelの薬でも保険が適応されたりするのです。(自分の保険でカバーしてもらえない場合はあきらめ、保険を持っていない人は問題外です。)民間の保険会社は支払いが多くなったら保険料を引き上げて帳尻を合わせられるので、国や州の保険よりフレキシブルな対応ができるのでしょう。

と聞くと正直うらやましい感じもします。しかし上記のデューク大学の研究はoff labelの抗がん剤治療に対して警鐘を鳴らしているのです。調査によるとフェーズIIIの治験でも全生存期間の延長が見られたのは27%のみ。奏効率の上昇や無進行期間の延長といった何らかの臨床的な改善が見られたのは47%。つまり約半数は現行の治療法の方に劣っていたか、せいぜい同等の効果でしかなかったということを意味します。さらに66%の治験では、新しい薬を含むレジメンの方が、既存のレジメンよりもグレード3以上の副作用の出る割合が高いという結果でした。まあ大部分の治験/臨床試験は標準治療の強化を狙っていて、現行の組み合わせに新薬を付け加えたり、現行の薬の用量を増加したりしてトライアルにかけるので、副作用が多少強まるのは想定内なのかもしれません。悩みの種は、結果的に効果はあまり変わらず副作用だけ大きくなる失敗例も少なからず存在する、という悲しい現実でしょう。

off label薬を使う臨床医のほとんどは、それが患者にとってプラスになると信じて行っていると考えられます。患者も最新の治療法を受けられることを喜んでいるようです。だったらいいじゃないの…という気もしますが、客観的な統計上の数字が示すように、効果や安全性が証明されていない治療法は標準治療よりリスクが高め。治験/臨床試験の枠外だと、そのマイナス面を患者がどれだけ理解しているかわかりません。しかも治験と平行して同じ薬がoff labelで使用可能だと治験の参加者が集めにくくなり、いつまでたっても効果や安全性が証明されません。治験に入ってしまうと既存薬やプラセボに当たるかもしれないので、off labelで使えるならその方がいいと患者は思いますからね。

1990年代に、乳がんの新しい治療法として高用量の抗がん剤と幹細胞移植を組み合わせた療法が有望視されたことがあったそうです。米国では患者からの要望に応え、臨床試験が済まないうちに普通の治療のオプションに加えられました。一種のoff label治療です。おかげで臨床試験の方は遅れに遅れましたが、10年経ってついに臨床試験の結果が出ました。蓋を開けてみると、標準的な用量の化学療法と効果に違いがみられないことが判明し、一夜にしてすたれてしまったそうです。その10年間、試験の枠外でも多くの女性が「新療法」を受けて無駄に骨髄をボロボロにしました。off labelの危険性を如実に表すエピソードです。

ダナ・ファーバー癌研究所で医学倫理を専門とするDr. Steven Joffeは、off labelの抗がん剤を使用するか否かは最終的に臨床医と患者の間で決めること、と述べています。新しい薬が患者を救うために本当に必要であれば、それをoff labelで投与することは医師として間違ってはいないものの、現状では安易にoff label薬に走りすぎる傾向があり、真の必要度以上に乱用されていると釘を刺しています。

新しい薬、新しい治療法。特に癌が進行、再発した人にとっては魅力的です。効果への期待。副作用への不安。そして治験/臨床試験の重要性を頭で理解しながらも、それを飛び越して自由に試してみたいという気持ち。感情に流されるのは危険だが、規則でがんじがらめになるも不都合。この問題は医師にとっても患者にとっても本当に複雑だと思います。

(内容はロイターの記事を元にしてあります。)
posted by leo at 16:51| Comment(0) | 抗がん剤(一般) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月06日

ロックンロール・ドクター

アメリカ、カナダそして多分イギリスやオーストラリアでも同様だと思いますが、一応ロックの本場ということでバンドを組んでいる人がやたら沢山います。それも若い人だけでなく、弁護士やビジネスマンといったロックのイメージからかけ離れたキャリアで活躍しながら、余暇にミュージシャンをやっている人も結構います。医師とて例外ではありません。

N.E.D.は癌の専門医、それも婦人科腫瘍医(Gynecologic Oncologist)が結成したロックバンドです。メンバー6名は全員、現役ばりばりの婦人科腫瘍医(主に外科)で、バンド活動はあくまでも副業ですが、昨年CDを出しプロモ用にこんな素敵な写真まで用意してあります。

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バンド名のN.E.D.はNo Evidence of Diseaseの略。日本の癌治療現場でも使われている用語らしいのでご存知の方も多いでしょう。「無病生存状態」、つまり画像診断で目に見える癌がゼロの状態を意味します。治療を終了した寛解中の人が、定期健診の時に一番聞きたい言葉だと思います。

バンドを始めたくらいですからメンバーのドクターは皆ロックが大好きなのだと思います。しかしバンドは遊びでやっているのではありません。音楽活動を通じて一般社会における婦人科癌の関心を高め知識を深めるのが目的です。バンドのホームページにも、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん等について、病気の概要、リスク要因、症状、スクリーニング法などの情報を載せています。CDの売り上げは全てGynecologic Cancer Foundation(婦人科癌基金)に寄付されます。さらに9月の卵巣がん認識月間には各地のイベントをツアーして回るという力のいれよう。趣味と実益を兼ねるとは正にこの事ですね。

同じ女性の癌でも、婦人科の癌は乳がんと比べて認知度が低いです。勿論、乳がん患者さんの中には、派手でちゃらちゃらした感じのピンクリボン運動に疑問を感じていらっしゃる方も少なくないでしょう。しかし婦人科の癌になった人から見ると、あれだけ社会で注目されて、一般市民や協賛企業から桁違いの寄付金が集まり(欧米の話)豊富な研究資金の一部となっているのは羨ましい気がします。そもそも婦人科系の癌は下半身の癌なので、オープンに話すのが何か憚られるような感覚がつきまとっているのです。

婦人科腫瘍医のロックバンドは、そうした婦人科癌の地味なイメージを払拭し、患者を元気づけ、自分に自信を持たせるのにも役立っています。不謹慎と批判する声はなく、「かっこいい〜!」「イェ〜!」と素直に盛り上がるのが西洋の感覚。もともとアメリカやカナダのドクターはフレンドリーで親しみやすい人が多いのですが、医師と患者の間の垣根をさらに低くする効果もあるようです。



(埋め込み動画の見られない方はこちらのリンクをお使い下さい。)

将来もし抗がん剤で脱毛するようなことがあったら、黒い革ジャンに黒サングラスでパンクロッカー風にしようかな〜と考えている私にとっても、こういうバンドの存在は励みになります。
posted by leo at 12:19| Comment(0) | 日々の生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月29日

従兄弟の明暗

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臨床試験についてとても考えさせられる記事を新聞で読みました。と言っても日本の新聞ではなくニューヨークタイムスです。その内容を紹介させていただきますすが、その前に治験/臨床試験全般についてウンチクを少々…(うざい!と思う方は飛ばして読んで下さい。)

ほとんどの癌患者さんや家族の方は正しい知識をお持ちでしょうが、社会一般では、治験/臨床試験は治療法の安全性を調べるのが目的であると考えている方も沢山いらっしゃるようです。これは間違ってはいませんが不正確だと思います。安全性の確認やどんな副作用が出るのかを調べるだけでなく、新しい薬/治療法が癌に対して本当に効き目があるのか否かを調べるのが治験/臨床試験の目的です。さらには現在使われている薬/治療法よりも優れていること、或いは現在使われている薬/治療法に付け足すことで治療効果が上がることも証明されなければ承認されません。ゆえに治験/臨床試験にはフェーズI、II、IIIと三段階あり(時にはIVまである)、癌の種類別にいちいち細かく分けて調査するのです。効果が科学的、統計的に証明されるまでは、いかに有望な治療法でも「investigative」(調査中)、「experimental」(試験中)にすぎず、既存の治療法よりリスクが伴う(効かないというリスクも含め)ことを、参加者全てに明らかにするのが治験/臨床試験のあるべき姿だと思います。治験/臨床試験中の有害事象だけに焦点を当てて騒ぎ立てる外野も困りものですが、想定外の有害事象が起こる可能性があるのが嫌な人は治験/臨床試験には向かないという気もします。

わかりきったことを説教めかしてグダグダ書くのはこの辺にして本題に移りましょう。ニューヨークタイムス紙の記事はフェーズIII治験にまつわる悲劇を取り上げています。フェーズIIIは、新しい治療法を受けるグループと標準的な治療法を受けるグループの二つ(または三つ巴)に分かれて効果を競い合う新薬開発のクライマックス。認可を検討する過程で欠かせないステップのように見えますが、それが患者に仇をなすこともあるという話です。

カリフォルニア州に住む若者2人。Thomas McLaughlinさん(24歳)とBrandon Ryanさん(22歳)は従兄弟同士です。2人とも体力が自慢のアウトドア派。そして2人とも若くしてメラノーマになりました。

McLaughlinさんがメラノーマの診断を下されたのは昨年9月のことでした。一応手術を受けたものの、既に遠隔転移しておりステージIV。手術後数週間で身体のあちこちに硬いしこりが現われ、肝臓にも腫瘍があり… と、非常に厳しい状況でしたがそれを好転させる出来事が12月に起こりました。McLaughlinさんの癌にはBRAFと呼ばれる遺伝子変異のあることが検査で判明し、BRAFを標的にした新薬PLX4032の治験に参加することを勧められたのです。他に有効な治療法がない上、健康保険を持っていなかったMcLaughlinさんにとって、製薬会社から無料で薬を提供してもらえる治験は正に渡りに船。しかもPLX4032はフェーズIのトライアルで劇的な効果を見せた超有望薬です。どれほど成績が良かったかと言いますと、BRAF遺伝子変異を持つ進行メラノーマの患者さん48名中37名(77%)に奏効、内3名は完全奏効。少人数のデータですが驚きの奏効率だと思います。期待にたがわず、PLX4032(錠剤)を服用すると程なくMcLaughlinさんの癌は縮小しました。

Ryanさんは、McLaughlinさんの約一月後にメラノーマであることがわかりました。ステージはIII。進行していましたが局所転移だったため、リンパ節の郭清手術と放射線というのが治療プランでした。無事治療を終え職場に復帰し、McLaughlinさんからPLX4032の話を聞いた際も(McLaughlinさん曰く「super pill」)、さして羨む様子のないRyanさんでした。ところがMcLaughlinさんが回復していく一方でRyanさんの体調は悪くなるばかり。Ryanさんは再発、肺に遠隔転移していたのです。そして今年5月、検査の結果Ryanさんの癌からもBRAF遺伝子変異が見つかり、RyanさんはPLX4032のフェーズIII治験に参加することになりました。(McLaughlinさんとは別の治験でした。)

上に書いた通り、フェーズIIIは新薬と既存薬との比較試験です。運命の女神は微笑まず、Ryanさんは無作為割り当てで既存薬(dacarbazine)に当たってしまいました。メラノーマは抗がん剤が非常に効きにくい病気です。ダカルバジンは標準的な治療で最もよく使われる薬ですが、奏効率は低く効果も少ないことが多いそうです。(注:比較試験は通常、医師にも患者にもどちらの薬を使っているかわからない形で行われますが、この治験はPLX4032が錠剤、ダカルバジンが点滴のためブラインドではありませんでした。)

UCLAのDr. Chmielowski はMcLaughlinさんとRyanさん両方の治験の担当医です。Ryanさんに治験の割り当てを告げるDr. Chmielowskiの顔は苦渋に満ちていました。Ryanさんと家族にとっては命の綱となり得る薬が使えない。Dr. Chmielowskiにとってはその薬を使わせてあげられない。関係者全員にとって辛い現実でした。Ryanさんがダカルバジンに当たってしまったのは誰のせいでもありませんが、医学の進歩のためにくじ運の悪い患者はより大きな効果を見込まれる薬を使えない、というのはやりきれない… はっきり言って残酷です。しかし一度治験への参加が決まり、治療法が割り当てられたら変えてもらうことはできません。偉い人に頼んでもダメ。よその病院に行ってもダメ。そこまで厳格に実施しなければ治験データの精度は保たれないのです。

McLaughlinさんは、Ryanさんに自分の治験と参加枠を取り替えることを申し出ましたが、それはRyanさん自身が断りました。ダカルバジンは残念ながら奏効せずRyanさんは6月半ばに亡くなられました。McLaughlinさんの方は、PLX4032開始後9ヶ月以上も良好な経過を保ち、4月には仕事(建築現場での力仕事)も再開しました。

McLaughlinさんとRyanさんのケースは極端な例です。普通は治験で新薬の効果が証明されたと言っても、無進行期間が3ヶ月延びたとか全生存期間が6週間延びたとか、その程度の差でしかありません。また仮にRyanさんがPLX4032を服用したとして、McLaughlinさんと同様に効き目が出たかどうかは不明です。しかし、一部の分子標的薬は特定の遺伝子変異を持つ人にしか効かないものの、その人達には従来の抗がん剤よりはるかに優れた効果を示すことが既に知られています。そうした薬の場合、スタンダードの比較試験は倫理的な問題を孕みかねません。目の前で患者が死んでいくのを手をこまねいて見ているのは医師の良心に反します。臨床医が「患者の延命」と「医学の発達への貢献」の板ばさみになるような状態は改善されるべきでしょう。FDA(米国食品医薬品局)の癌治療薬部門のディレクターであるDr. Richard Pazdurは、インタビューで「(PLX4032のような)新しいタイプの薬に対しては個別に審査し、規則に柔軟性を持たせたり公開討論したりする必要があるかもしれない」と語ったそうです。

尚、PLX4032はBRAF(V600E) キナーゼ阻害薬で、Plexxikonという会社が開発しロシェが製造元となります。他ののコード名(RO5185426、RG7204)で呼ばれることもあります。これとは別にGSK2118436と呼ばれるBRAF阻害薬もあり、グラクソスミスが治験中です。 BRAF遺伝子変異はメラノーマに頻繁に見られる遺伝子変異ですが、他の癌にもたまに起こるそうです。現時点ではメラノーマ中心に研究が進められており、上に引用した奏効率は全て進行性メラノーマに使用した場合です。
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2010年10月23日

ミラノ通信

Milan cathedral.jpg

もう2週間前になりますが、10月8〜12日に美しいミラノの街で欧州臨床腫瘍学会(ESMO)が開かれました。6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)に比べると若干目立たない印象ですが、そこはヨーロッパ。安易にアメリカに追従せず、西洋医学発祥の地としての意地と誇り(?)を感じさせます。

とは言え内容的にはASCOと被るものも少なくないようです。特に卵巣がんは、乳がん、大腸がん、非小細胞肺がん等と比較すると研究の数も控えめですし、新しい有望な治療法などそう簡単には出てきません。そんなわけでESMOの主役もやはりアバスチンでした。しかし発表された治験はASCOとは別件です。

ESMOで発表されたICON7(治験の名前)は、ASCOで発表されたGOG0218(これも呼び名)と同様に、カーボプラチン+タキソールの標準的な初期治療を受けたグループとアバスチンを付け加えたグループ(カーボ+タキ+アバで6回、その後アバで維持療法)を比較しています。が、相違点も幾つかあります。

1.アバスチンの用量:GOG0218が15mg/kgだったのに対し ICON7は7.5mg/kgでした。

2.参加者のステージ:GOG0218がステージIII、IV限定だったのに対し、ICON7はステージIII、IVだけでなくIIB、IICも可。さらにステージIやIIAでも組織型が明細胞もしくは悪性度がグレードIIIであれば参加を許されました。

3.維持/地固め治療の回数:GOG0218が最長16回だったのに対し ICON7は12回で終了しました。

言い換えると、薬の量が半分でも効くか?早期の癌にも恩恵があるか?維持療法は短くてもいいのか?
という事みたいですね。

さて結果は…
無進行期間(PFS)がカーボ+タキのみ→17.3ヶ月、カーボ+タキ+アバ→19ヶ月…だそうです。た…た…たったの2ヶ月。全生存期間(OS)ならともかく、PFSの延長が2ヶ月弱というのはちょっと効果が慎ましすぎるように感じます。ちなみにGOG0218の結果を復習すると、カーボ+タキのみのPFS→10.3ヶ月、カーボ+タキ+アバ→14.1ヶ月。PFSの延長は4ヶ月弱でした。

用量を半分にしたから効き目が半分だったという見方もできますが、参加者の構成(ICON7には初期ステージの人も混ざっていた)が影響していたことも有り得ます。と言うのは、参加者の中で癌の進行度の高い人(手術後取りきれなかった癌が1cm以上のステージIIIとステージIV)だけに絞ると、カーボ+タキのみ→10.5ヶ月、カーボ+タキ+アバ→15.9ヶ月と改善の幅が多少広がります。(但しブレイクダウンして頭数が小さくなっているので統計的には誤差が大きいです。)

ICON7のホームページに行くと実に分かりやすいプレゼンテーション用資料がダウンロードできます。グラフが沢山使ってあるので英語が苦手な人も一見の価値があります。その資料のサブグループ分析(14ページ)を見ると、アバスチンを加える恩恵が顕著に表れているのはステージIII、IVの人のようです。また、病気が進行していない人の割合を比較した折れ線グラフ(11、12ページ)でわかる通り、アバスチンを加えた組が加えなかった組を最も引き離しているのは治療終了後1年くらいで、その後徐々に差が縮まり、2年後にはアバスチン無しの組の方が無進行の人の割合が高くなっています。

アバスチンの効果が一応は示されたものの期待されていた程ではなく、主任研究者のDr.Tim Perrenは、「2つの治験(GOG0218とICON7)の結果が、患者と医師との面談の際に(治療方針を決める上で)影響を及ぼすことは間違いない」としながらも、「しかしより重要なのは将来の臨床試験への影響である」と付け加えています。さらに「一番大きな疑問はアバスチンがPFSだけでなくOSも延長するかどうかだ」ともおっしゃっています。それがわかるのは2012年。それまで何とか元気でいたいものです。

まぁ素人の一般患者である私の印象としては、アバスチンが全生存期間を延長すると証明されない限り、「みんな一緒」のファーストラインに加わる可能性は薄くなった気がします。しかし、ステージIII、IVの初期治療強化や再発治療のオプションの一つとして魅力的なのは変わりません。どの薬と組み合わせて誰にどのタイミングで使用すると最も効果的なのか、今後も引き続き様々な治験を実施することで徐々に解明されていくことと思います。

さて、アバスチンに関してはもう一つ興味深い研究発表がありました。(リンク先のESMO資料の6ページめです。)これはアバスチンがオフレーベルで、既に卵巣がん治療に用いられているアメリカでの臨床データを分析したものです。オフレーベルというのは、他の癌の治療用に認可されている薬を未承認の用途に使うこと。またここで言う臨床データとは、トライアルではなく普通の治療例です。

アバスチンは維持/地固めの他、腹水がパンパンに溜まってしまった人の症状緩和目的でも使用されるそうです。腹水を減らすのに効果大という肯定的な意見と、しかし薬を止めた途端に反動で腹水が急増すると警戒する声と両方あり、その真偽をニューヨークのスローンケタリング癌センターの患者さん106名のデータから検証しようという試みです。

106名の内、48名はアバスチン開始前に画像で腹水が確認されており、腹水を抜く処置を何度も受けている人も14名含まれていました。これら腹水有りの人達の内、31名(65%)はアバスチンを投与することで腹水が減りました。アバスチンを止めた後の記録があるのは76名、内58名(76%)の腹水は増加しませんでしたが、18名(24%)は投薬終了後に腹水が急激に溜まってしまったそうです。効き目はあるがリスクもあるという感じですね。この106名の患者さんは皆、病気が非常に進んでおり、平均で過去に6種類の化学療法レジメンを経験なさっています。それだけ切羽詰った状況であれば多少危ない橋でも渡ろうという気になるでしょう。最後の手段の一つとして見れば打率も決して悪くありません。その病状から寛解するというのは現実的でないとしても、何ヶ月か苦しい症状から解放されて好きなことができるのであれば意義は大きいのではないかと思います。

アバスチンの事は何度も読んだり書いたりしているので、本当にそろそろ打ち止めにしたいです。でも他の新薬は、治験でほとんど効果が出なかったり開発の初期段階だったりして、認可に一番近いのはアバスチンってことになっちゃうんですよね。それもどうなることやら…
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2010年10月16日

ジョギングより散歩がベター

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前回、卵巣がんのリスク要因である出産経験や経口避妊薬使用の有無などについて書きました。その際、例としてオランダの疫学調査結果を引用させていただいたのですが、その研究の名称は「The Netherlands Cohort Study on Diet and Cancer」で、食生活や運動など生活習慣全般が癌の罹患率に与える影響について調べるのが目的でした。一般的に食生活や運動は癌のリスク要因として真っ先に頭に浮かぶ事柄のような気がします。しかし癌との因果関係を科学的に実証するのが難しい因子であることも知られています。また癌と一口に言っても、部位、種類によって何がリスクとなり、どの程度深く係わっているのかは異なるので、十把ひとからげにしては考えるのは危険です。

ということで、ここからは卵巣がん限定で上記のオランダの調査を中心に、食事や運動との関係についての研究を幾つか紹介させていただきます。尚、癌の疫学調査というのは薬の臨床試験などとは全く性質が異なり、複数の似たような調査を比べると結果が相反することも少なくありません。ですから私が例に挙げる調査結果イコール普遍的事実と取らず、参考データとして捉えてていただければと思います。(注:リスクとは卵巣がんに罹患するリスクのことであり再発との関係は不明です。)

まずは運動から始めましょう。オランダの調査では「職業以外の身体的活動(non-occupational physical activity)」について質問しており、通勤、買い物、犬の散歩、散歩、自転車、庭仕事など日常生活範囲内で身体を動かすことを指しています。身体的活動が一日に30分以下の人と比べると、30〜60分、60〜90分、90分以上の人は、それぞれリスクが22%、14%、28%減という結果でした。都市部に住んでいると、公共交通機関の発達と交通渋滞の相乗効果から車に頼らず生活することも可能なのですが、郊外や地方ではどこへ行くにも車を使い、駐車場と目的地の建物の間しか歩かない人も多いようです。(アメリカやカナダは特にその傾向が強いように思います。)そういう状況であれば、歩いたり自転車に乗ったりする機会を意識的に増やした方がいいのかもしれませんね。余暇に徒歩や自転車で散策するのも身体に良さそうです。週に1〜2時間の散策で34%、2時間以上で35%のリスク減と出ました。

しかし、身体を動かせば動かすほどいいという訳ではありません。スポーツに参加したりジムでトレーニングしても卵巣がんのリスクに良い影響は出ないようです。それどころか、統計的に有意な差ではありませんが、週に1時間以上スポーツをする人はしない人よりリスクが高くなる傾向があります。激しい運動をすると卵巣がんのリスクが高くなる、というのは素人の頭では不思議に思えますが、別の疫学調査でも同様の結果が出ています。米国アイオワ州で約42,000人の女性(55〜69歳)を対象に実施された調査では、軽い運動(散歩、ゴルフ、ボーリングなど)と激しい運動(ジョギング、テニス、水泳、エアロビクスなど)に分けて質問したところ、やはり激しい運動をする人の間でリスクが高めであることがわかりました。

さて、食生活については運動以上に関係が複雑なのか過去の疫学調査の結果もまちまちです。誇張やデマも飛び交いやすい分野で、何を信じて良いのやら…とため息をつきたくなることもありますが、とりあえず特に関心の高い乳製品について見てみましょう。結論から言いますと、オランダの調査では乳製品の摂取と卵巣がん罹患率の間に相関関係はありませんでした。牛乳、ヨーグルト、チーズとカテゴリー別に、摂取量低、やや低、やや高、高と4段階に分けて罹患率を比較したものの、差異はなし。ラクトース(乳糖)の摂取量でも差異はなし。唯一違いが認められたのは乳脂肪。1日に31g以上乳脂肪を取っている人はリスクが1.53倍という結果でした。

公平を期すため別の研究結果も紹介しておきます。スウェーデンで約61,000人(38〜76歳)を対象に行われた疫学調査では、一日に4サービング以上の乳製品を取っている人のグループは2サービング以下のグループと比べてリスクが1.6倍増。漿液性卵巣がんに絞ると2.0倍だったそうです。サービングとは1回に食べたり飲んだりする基準量で、牛乳なら250ml、ヨーグルトなら175g、チーズなら50gくらいです。乳製品のカテゴリー別では牛乳が最も影響大のようで、1日に2サービング以上飲む人は、ほとんど飲まない人(週に1サービング以下)より1.3倍(漿液性は2.0倍)罹患率がアップしていました。

オランダとスウェーデン。どちらも北欧。民族的にも近い2つの国から食い違う調査結果が出てしまう。それほど食生活のリスクは判定しにくいのです。データの精度が低くなる理由の一つとして、卵巣がんになる人の絶対数が少ないことが挙げられます。欧米諸国の中でも北欧は卵巣がんの罹患率が比較的高いそうです。それでも卵巣がんになったのは、オランダ:約62,000中282名(11年間)、スウェーデン:約61,000人中266名(13年間)。統計のサンプル数としてはギリギリの頭数です。それ以外の理由としては、スウェーデンの牛乳の方がオランダの牛乳より濃くて乳脂肪も乳糖も沢山入っているだろうとか、スウェーデンの乳牛の方がオランダの乳牛より添加物の多い配合飼料を食べているだろうとか、妄想とジョークの域を出ないことしか思いつきません。

食生活や運動と癌の関係は単純明解からは程遠く、原因とは言えないまでも無関係とは言い難く、欧米の政府機関、癌研、病院などではバランスの取れた食事と適度な運動を奨励しています。直接癌と関係なかったとしても、他の病気(心臓病、糖尿病など)に対する予防効果があることは医学的に明らかなので、やっておいて損はないという意味だと解釈しています。その程度?とガッカリなさらないで下さいね。因果関係をどこまで信じるかは結局のところその人次第。私自身はどちらかと言うと生活習慣を変えることに消極的なのですが、歩いて通勤したり(交通費をケチっているという部分もありますが…)、毎日ブロッコリーを食べたり緑茶を飲んだりしているのは、心のどこかで「もしかしたら」と思っているからなのでしょう。
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2010年10月09日

少子化と卵巣がん

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人はどうして癌になるのでしょうか。

癌は、肺気腫(アスベスト)や子宮頸がん(HPVウィルス)などごく一部を除くと原因がはっきりわかりません。原因とは別にリスク要因というのがあって、生活習慣、生活環境、遺伝、体型など様々ですが、これは要因に当てはまると統計的に癌になる確率が高いらしい…発がんに関係しているかもしれない…といった可能性レベルの話です。かなり確実と見なされているリスク要因でも100%からは程遠く、その顕著な例は肺がんだと思います。喫煙が肺がんのリスクを倍増するのは間違いありませんが、運よく肺がんにならない喫煙者は大勢います。その一方で、自分も家族もノン・スモーカーなのに肺がんになってしまうお気の毒な方もいらっしゃいます。恐らく人の健康と言うのは色々な要素の組み合わせ、積み重なりで保たれているのでしょう。しかも一つの因子がある種の癌のリスクを上げ、別の種類の癌のリスクを下げることもあり、常に1+1=2とはならないのが身体の不思議さです。

さて卵巣がんのリスク要因として、年齢、家系や遺伝(BRCA1/BRCA2遺伝子変異)以外で有力視されているのが、出産歴、初潮から閉経までの年数、経口避妊薬、避妊手術(卵管結紮術)、子宮摘出など、女性ホルモン及び生殖機能に係わる事柄です。こうしたリスクが癌の罹患率に影響を及ぼす度合いについては、主に疫学調査を通じて研究されています。

実例の一つとしてオランダの疫学調査結果を紹介します。この調査は1986年から2002年にかけてオランダで実施され、総計で6万人以上の女性(55〜69歳)が参加しました。その内、調査期間中に卵巣がんになった375名と、コーホートの2331名(癌になった人のグループと年齢、身長、体重、家族内の卵巣がん歴、などの構成がほぼ等しくなるよう無作為抽出した、癌にならなかった人のグループ)を比較しました。

まず出産については、全く出産経験のない女性に比べ、子供を一人でも産んだことのある女性は卵巣がんになるリスクが29%低いという結果でした。子沢山になればなるほどリスクは下がり、子供の数が3〜4人だと34%減、5人以上だと47%減。10人以上産んだらリスクがゼロになる(!)のはさすがに無理としても、南米、アフリカ、東南アジアなど子供の数の多い地域は、欧米と比べて卵巣がんの罹患率が低いのは事実です。

どうやら卵巣というのは、排卵するのが主な任務でありながら、休みもなく毎月せっせと働かされるとストレスがたまってご機嫌斜めになるようです。妊娠期間は排卵しなくてもいいわけですから、卵巣にとっては骨休みとなる筈なのに、私はその休暇を一度もあげずに申し訳ないことをしたと思います。

妊娠しなくても排卵を止める方法はあります。経口避妊薬を服用することです。そのせいかピルを使用したことのある人は、無い人より卵巣がんになるリスクが29%も低いそうです。特に5年以上飲み続けた人は53%もリスクが減少するという結果でした。服用の時期としては20代、30代の方が40代以降よりメリットが大きいようです。経口避妊薬を使用すると子宮内膜がんにも罹りにくくなると聞きました。しかし残念ながら乳がんのリスクは少し増してしまいます。あちらを立てればこちらが立たず。難しい選択ですが、私が10年、15年前にこうした事情を理解していたら、ピルの服用に対してもっと前向きに考えていたでしょう。(人工的に排卵しないようにするなんて絶対体に悪い!と当時は思い込んでいました。)

また、手術による避妊法(卵管結紮術)も卵巣がんのリスクを下げるそうです。卵管を縛っても排卵がなくなるわけではありません。生理も来ます。では何故リスクが減少するのかというと、排卵しにくくなるとか、女性ホルモンの量が減るとか、子宮から発がん性物質が入り込まなくなるとか、仮説は幾つか立てられているものの詳しいメカニズムは不明です。避妊手術前の診察で、ごく初期の卵巣がんが発見されることも時折起こるため、スクリーニングのような役割があるとも言えます。オランダの調査は避妊手術に関する質問を含んでいませんでしたが、卵管結紮術を受けた人は卵巣がんで亡くなる確率が36%低くなる、という別の調査結果が過去に発表されています。

手術がらみでもう一つ。子宮筋腫などの理由で子宮を切除した人は、子宮がんだけでなく卵巣がんのリスクも低くなります。オランダの調査では50%減と出ました。卵巣も取ってしまえば更にリスクが減るのでしょうが、閉経前の女性が卵巣を失くすと、突然激しい更年期障害に見舞われて大変なのは皆さんよくご存知の通りです。ですから予防目的で健康な卵巣を切除するのは、BRCA遺伝子変異のある方とか、進行性乳がんでホルモン受容体がネガティブな方とか、やむにやまれぬ事情がある場合に限られています。子宮については切除しても後遺症が少ないので、出産の予定がないのであれば良性の疾患でも子宮とサヨナラした方がいいのかもしれません。お腹に傷が残るし、手術は身体に負担をかけるので切らずに治したいと思う方も多いでしょうが、使わない臓器が体内に居座っていると病気のリスクを上げるだけ、という見方もできます。生理痛などに悩まされることもなくなりスッキリしますよ。

最近カナダで、良性疾患で子宮切除手術を行う場合、一緒に卵管も切除すると(卵巣は残す)卵巣がんのリスク軽減により効果的、という声が上がっています。これは奨液性卵巣がんの約30%は卵巣本体ではなく卵管から始まっている、とする仮説に基づいています。卵管を失くしても身体に支障をきたすことはありませんが、子宮のみ切除するのに比べると手術が多少複雑になるため、現時点では子宮だけ取るのが一般的なやり方らしいです。他に理由が無いのに卵管だけ切除するのはどうかと思いますが、子宮を切るついでに卵管も、というのであれば患者側の抵抗感は少ないような気がします。

20歳で結婚して22歳で初出産。それから2年おきに子供を4〜5人産み全員母乳で育てる。という風にしたら、卵巣がん、子宮体がん、乳がんのどれにも罹りにくくなるのでしょうね… しかし社会の仕組みも人のライフスタイルも変わった今、そういう生き方をするのは難しいです。結婚しない。結婚しても子供は作らない。子供を作るとしても時期を遅らす。欧米も日本も少子化の傾向はすすむ一方です。ここ半世紀に起こった急激な変化が、女性の身体にどんな影響を与えているのか。女性特有の癌の増加にどう係わっているのか。考えると少し悲しくなります。もっとも他にもリスク要因はありますし、リスクはあくまでもリスク。当てはまらない人の方が多いのでしょうが… 癌になるのを恐れるあまり100年前の状態に戻ろうとするのではなく、前進する形で何か改善策があるといいですね。20代で出産、育児をするための経済的な援助(無利子の出産ローンとか)、教育費の低減、および子育てを終えた30〜40代が社会進出しやすくなるよう雇用体制の見直し等、社会全体で取り組んでほしい問題だと思います。
posted by leo at 16:27| Comment(0) | 卵巣がんニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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